スクワットは毎日していいのか 回復という観点から考える
TOMOYUKI SHIMAWAKI(島脇 伴行) トレーナー/ヘルスコーチ|BODY DIRECTOR
参考文献:査読済み臨床試験・系統的レビュー
- ●スクワットを毎日していいかどうかが、何によって決まるのか(鍵は「回復」にあること)がわかる
- ●筋肉痛がないから大丈夫とは限らない理由、睡眠・自律神経・ストレスからくる「全身の疲労」という見落としに気づける
- ●目的によって適切な頻度が変わること(ジムでの高負荷と、自宅での低負荷では考え方が違うこと)がわかる
- ●なぜ「毎日100回」のような回数を競うやり方が必ずしも良くないのか、回復と部位の観点から理解できる
- ●頑張りすぎが事故につながる現実と、自分の体の状態をどう見極めればよいかの考え方がわかる
「スクワットは毎日やってもいいのでしょうか」。これは、私が現場で本当によく受ける質問です。毎日続けたほうが早く効果が出るのでは、と考える方は多いと思います。先に申し上げると、答えは一つではありません。毎日していい場合もありますし、してはいけない場合もあります。それを分けるのは、回数でも根性でもなく、「回復」です。この記事では、スクワットの頻度を、回復という観点から考えていきます。頑張り屋さんほど、知っておいていただきたい話です。
<体験談> 毎日頑張っていたのに、ある時から効果が止まった
よくあるパターンです。「毎日欠かさずスクワットをやっています」という、とても真面目な方。最初の数週間は調子よく、体も軽くなっていた。ところが、ある時期からぱたりと変化が止まり、むしろ体が重く、だるく感じるようになってきた。本人は「足りないのかも」と、さらに回数を増やそうとされます。
けれど、私から見ると、必要なのは逆のことでした。増やすのではなく、休むこと。体が回復しきらないまま負荷を重ね続けたために、成長のための土台が削れてしまっていたのです。まさか休むことが前進になるとは、と驚かれました。頑張る方ほど、この落とし穴にはまりやすいのです。
毎日していいかどうかは「回復しているか」で決まる
スクワットを毎日していいかどうか。その答えは、とてもシンプルです。回復が行われているのであれば、毎日行ってもかまいません。逆に、筋肉痛がある、だるい、しんどい、という状態であれば、それは疲れが残っているサインですから、その日は行わないほうがよいのです。判断の基準は、回数や曜日ではなく、自分の体が回復しているかどうかにあります。
そのうえで、負荷の種類によって、適切な頻度は変わってきます。ジムでマシンやバーベルを担いで行うような、強い負荷をかけるストレングストレーニングであれば、週に2回ほどがちょうどよいバランスです。週に1回だと、筋肉を大きくする目的では効果が限定的になります。一方で、家で無理のない軽い負荷で行うのであれば、頻度はもっと上げてかまいません。特に、シニア層になって関節に強い負荷をかけられない場合は、低い負荷で頻度を高める、という考え方が当てはまります。
PubMedで確認できる系統的レビューとメタ解析では、低い負荷でも高い負荷でも、筋肉を大きくする効果はほぼ同等に得られると報告されています。一方で、最大の筋力を高めることに関しては、高い負荷のほうが有利でした。つまり「軽い負荷では意味がない」わけではなく、低負荷でもしっかり追い込めば筋肉は育つということです。家での低負荷・高頻度に十分な意味があることを裏づける結果です。
ジムでの高負荷と、自宅での低負荷は分けて考える
大切なのは、「スクワットは週何回が正解か」という問いに、たった一つの答えはない、ということです。あなたが何を目指すか、どんな負荷で行うかによって、ふさわしい頻度は変わります。最大筋力を本気で高めたいなら、強い負荷を週に数回、しっかり休みを挟みながら。健康維持や習慣づくりが目的で軽い負荷なら、毎日に近い頻度でも問題ありません。
PubMedで確認できる大規模な解析でも、最大筋力を高めるには高めの負荷が有利である一方、筋肉を大きくする効果は、さまざまな負荷や頻度の組み合わせで同じように得られることが示されています。「自分の目的は何か」をはっきりさせることが、適切な頻度を見つける第一歩です。
見落とされる「全身の疲労」。筋肉痛だけが疲労ではない
ここが、この記事で最もお伝えしたいことです。トレーニングでの疲労というと、多くの方は筋肉痛のような、体の一部分の疲れをイメージされます。けれど、疲労はそれだけではありません。睡眠不足、自律神経の乱れ、極度の緊張、持続的なストレス。こうしたものからも、体は確実に疲労します。これを、全身疲労や内科的疲労と呼びます。筋肉痛がないからといって、体が回復しているとは限らないのです。
この全身の疲労は、レッスンでお客様と顔を合わせたときの雰囲気やリアクションでわかります。動きを見てもわかりますし、筋力を見てもわかる。施術で体に触れてもわかりますし、生活習慣を伺ってもわかります。とにかく、経験を積んだトレーナーには、わかるのです。そして、これを見逃して高い負荷の運動をさせてしまうことが、事故につながります。
これは、決して大げさな話ではありません。国の機関も、この問題に警鐘を鳴らしています。私のセッションでは、筋トレを行うだけではなく、コーチングや栄養、整体も合わせて提供しています。だからこそ、その日の体の状態を多面的に見て、決して無理はさせません。今のこの体を、どうすればより良い方向へ運べるのか。お客様の人生の伴走者となることを目指して、サービスを組み立てています。
2026年5月に消費者庁の消費者安全調査委員会が公表した報告書によると、パーソナルトレーニング中の事故は2019年からの7年間で196件登録され、増加傾向にあります。そのうち約4割が、治療に1か月以上かかるケガでした。原因として、トレーナーの知識・経験の不足や、危険性の見積もりの甘さが挙げられています。利用者が「もう限界です」と伝えても続けさせられ、ケガに至った例も報告されています。体の状態を見極める目が、いかに大切かを示しています。
<体験談> 筋肉痛はないのに、なぜか調子が出ない
こんなパターンもあります。「筋肉痛もないし、体は問題ないはずなのに、今日はなぜか力が入らないんです」とおっしゃる方。お話を伺うと、仕事が立て込んで睡眠が削られていたり、大きなプレッシャーを抱えていたりすることが少なくありません。
体は正直です。筋肉そのものは痛んでいなくても、睡眠不足やストレスで全身が疲れていれば、動きにも筋力にも、はっきりとそれが表れます。こういう日に「筋肉痛がないから大丈夫」と高い負荷をかけるのは、得策ではありません。むしろ軽めに切り替えたり、思い切って休んだりするほうが、結果として前に進めます。
今の自分の体に、毎日のスクワットが合っているか。一度ご相談ください。
表参道プライベートジム BODY DIRECTOR では、
その日の体の状態を見極め、一人ひとりに合わせた無理のない指導を行っています。
頻度を見直すと、回復する。部位によって疲労は違う
最大筋力を高めるようなストレングストレーニングを目指すのであれば、運動の強度と頻度は、しっかりと見ていく必要があります。そして、見落とされがちなのが、部位によって疲労の残り方が違う、という事実です。
特に、姿勢を保つために働く筋肉、たとえばハムストリングス(もも裏)や脊柱起立筋群(背骨に沿った筋肉)は、他の部位よりも疲れが長く持続します。これらが疲れたままだと、スクワットの質も下がり、痛めるリスクも上がります。実際に、スクワットの頻度を少し下げることで、これらの部位が回復していく、という経験を私は何度もしてきました。これは、私自身のトレーニングでも同じです。頻度を下げることが、かえって全体の前進につながるのです。
タイミングの問題も無視できません。体を痛める代表的なものに、肉離れがあります。筋トレそのものは問題なくこなせていても、たとえばスポーツ選手に筋トレをさせすぎたり、競技で負荷がかかっている時期に筋トレのタイミングを誤ったりすることで、有名なアスリートでも怪我につながった例は、何度も起きています。「やれること」と「今やるべきこと」は、必ずしも同じではないのです。
スクワットそのものが体にもたらす効果については、別の記事で詳しくまとめています。あわせて読みたい方は、スクワット効果の新事実:科学が証明する8つの驚きのメリットもご覧ください。適切な頻度で続けてこそ、その効果は積み上がっていきます。
強い痛みやだるさ、体調不良があるときは、無理をせず休んでください。トレーニング中に「きつい」「無理だ」と感じたら、それを我慢する必要はありません。痛みや違和感は、遠慮なく専門家に伝えてよいものです。なお、回復のスピードや適切な頻度には、年齢・体質・生活習慣による個人差が大きく、この記事で述べた目安がそのまま全員に当てはまるわけではありません。紹介した研究も、対象や条件に限りがあります。本当に自分に合った頻度は、体の状態を見ながら見極めていく必要があります。
まとめ 量を競うより、回復を整える
「スクワットは毎日していいのか」。その答えは、回復しているかどうか、にありました。回復できていれば毎日でもよく、疲れが残っていれば休む。判断の基準は、回数でも曜日でもなく、自分の体の状態です。そしてその疲労には、筋肉痛のような局所の疲れだけでなく、睡眠やストレスからくる全身の疲労も含まれます。
頑張る方ほど、毎日の回数を増やすことに目が向きがちです。けれど、本当に大切なのは、量を競うことではなく、回復を整えること。休むこともまた、トレーニングの一部です。今日の自分の体に耳を澄ませて、やる日と休む日を見極める。それが、長く続けられて、確かに前へ進むスクワットへの道です。
やる日と休む日の見極めを、プロと一緒に。
表参道プライベートジム BODY DIRECTOR では、
アーティスト・俳優・ビジネスパーソンの身体管理を個別にサポートしています。
- Schoenfeld BJ, Grgic J, Ogborn D, Krieger JW. Strength and Hypertrophy Adaptations Between Low- vs. High-Load Resistance Training: A Systematic Review and Meta-analysis. J Strength Cond Res. 2017;31(12):3508-3523. doi:10.1519/JSC.0000000000002200(PubMedにて確認)
- Currier BS, McLeod JC, Banfield L, et al. Resistance training prescription for muscle strength and hypertrophy in healthy adults: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Br J Sports Med. 2023;57(18):1211-1220. doi:10.1136/bjsports-2023-106807(PubMedにて確認)
- 消費者庁 消費者安全調査委員会「消費者事故等調査報告書 パーソナルトレーニングにおける事故」2026年5月27日公表(消費者庁ウェブサイトにて確認)
1977年生まれ。2002年パーソナルトレーナーとして開業。2005年、日本で初めてとなる完全個室の表参道プライベートジム「BODY DIRECTOR」を設立。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中心。筋トレだけでは健康効果に限界があるとの考えから、生化学を基にした栄養指導、自律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供。
法人クライアント:ポニーキャニオン(IRORI Records)、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、トイズファクトリー、トランジットジェネラルオフィス、ラストラムミュージックほか。