スクワットで痩せるは本当か 代謝の仕組みと栄養から考える
TOMOYUKI SHIMAWAKI(島脇 伴行) トレーナー/ヘルスコーチ|BODY DIRECTOR
参考文献:査読済み臨床試験・系統的レビュー
- ●「スクワットをやれば痩せる」というイメージが、どこまで本当でどこからが誤解なのか整理して理解できる
- ●スクワット中の消費カロリーは実は大きくない一方、運動後に代謝が高い状態が続く仕組みがわかる
- ●スクワットを頑張っているのに痩せない人が見落としている「食事・カロリー」の大原則がわかる
- ●よくある糖質制限の落とし穴と、脂質・タンパク質・炭水化物の正しい考え方がわかる
- ●なぜ血液検査をもとに栄養を見るのか、自分の体が「脂肪を燃やせる状態」かを知る意味がわかる
「スクワットをすれば痩せる」。そう聞いて、毎日しゃがんでは立ち上がりをくり返している方も多いと思います。けれども、この言葉には半分の本当と、半分の誤解が混じっています。私は26年間トレーナーとして多くの方の体と向き合ってきましたが、スクワットだけを頑張って痩せられた方は、実はそれほど多くありません。この記事では、「スクワットで痩せる」という話を、代謝の仕組みと栄養という二つの面から、できるだけ正直に考えていきます。煽るつもりはありません。本当のところを知っていただくための記事です。
<体験談> 毎日スクワットを頑張っているのに、体重が変わらない
よくあるパターンがあります。「毎日スクワットを50回やっているのに、体重が全然落ちないんです」とおっしゃる方です。とても真面目で、毎日きちんと続けていらっしゃる。努力の量は申し分ありません。それなのに、数字が動かない。本人は不思議で仕方がない、という表情をされます。
お話を伺っていくと、答えが見えてくることが多いです。スクワットを始めてから、「運動したから大丈夫」と、以前より少し食べる量が増えていたりする。あるいは、スクワットそのもので消費しているカロリーを、実際よりずっと大きく見積もっていらっしゃる。努力が足りないのではないのです。「スクワットで痩せる」という言葉を、少しだけ大きく受け取りすぎているだけなのです。
スクワットで痩せる、という考えのどこが本当で、どこが誤解か
まず、誤解のほうからお話しします。「スクワットで痩せる」と考えている方の多くは、スクワットで消費カロリーが大きく増えると思っていらっしゃいます。しかし、スクワット中の消費カロリーは、瞬間的には高くても、合計するとせいぜい数十キロカロリー程度です。ごはん一口ぶんにもならないこともあります。ここだけを見れば、「スクワットをやれば痩せる」というのは、かなり過大なイメージだと言わざるをえません。
では、本当のほうは何か。スクワットのような筋力トレーニングを行うと、全身が活性化し、その後しばらく、特に2日間ほどは代謝が高い状態が続きます。運動が終わったあとも、体がエネルギーを使い続けてくれる。この点に着目するなら、確かにスクワットは痩せやすさに寄与する、と言えます。
ただし、ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。この「運動後に代謝が続く」という現象は、スクワットだけの特別な力ではありません。全身を使う筋力トレーニングなら、他の種目でも同じように起こります。つまり、「スクワットだから痩せる」のではなく、「しっかりした筋力トレーニングだから、痩せやすさにつながる」というのが、より正確な言い方なのです。
PubMedで確認できる研究に、まさにスクワットを題材にしたものがあります。健康な男性がスクワットを100回行ったところ、運動の24時間後と48時間後にも、安静時の代謝とランニング後のエネルギー消費が高まっていたという報告です。これは、傷ついた筋繊維を修復するためにエネルギーが必要になるためと考えられています。「運動後しばらく代謝が高い状態が続く」ことを、数字で裏づける結果です。
「運動後に代謝が続く」をどう捉えるか
運動後にエネルギー消費が高まる現象は、専門的には「EPOC(運動後過剰酸素消費。運動で乱れた体を元に戻すために、終わったあとも余分に酸素とエネルギーを使うこと)」と呼ばれます。難しい言葉ですが、要は「運動の余韻で、しばらく体が燃え続ける」という意味です。
ただ、この効果も過大評価は禁物です。PubMedで確認できる別の研究では、筋力トレーニングの14時間後には安静時の代謝が高まっていたものの、24時間後にはほぼ元に戻っていた、という報告もあります。つまり、代謝が高まるのは確かですが、それは永遠に続くわけでも、莫大なカロリーを消し去ってくれるわけでもありません。あくまで「痩せやすさを後押しする、ささやかで確かな追い風」と捉えるのが、ちょうどよい距離感です。
痩せるかどうかは、結局はエネルギー収支で決まる
では、痩せるかどうかを最終的に決めるのは何か。栄養学で一般的に考えられているのは、とてもシンプルな原則です。摂取するカロリーより、消費するカロリーが多い状態を作ること。このマイナスの状態が続けば、体は蓄えた脂肪を使い始めます。逆に、どれだけ運動しても、それ以上に食べていれば痩せません。
先ほどの体験談を思い出してください。毎日スクワットを頑張っているのに痩せない方は、多くの場合、この収支がマイナスになっていません。運動で数十キロカロリーを消費しても、食事が増えていれば、収支は簡単にプラスに戻ってしまいます。だからこそ私は、「スクワットを頑張る」ことの前に、まず食事を見直す、という順序を大切にしています。運動は収支を助けてくれますが、主役ではないのです。
PubMedで確認できる国際スポーツ栄養学会(ISSN)の公式見解では、脂肪を減らすことを目的とする食事は、持続的なカロリー不足によって成り立つと明言されています。さらに、低脂肪から低糖質まで幅広い食事法が同じように体組成の改善に有効であること、減量中に筋肉を保つには十分なタンパク質が重要であることも示されています。「何を食べるか」以前に「収支」が土台である、という大原則を学会レベルで確認した内容です。
<体験談> 糖質を抜いて体重が落ちたのに、体がしぼまない
もう一つ、よくあるパターンです。「糖質を抜いたら体重が落ちました。でも、なんだか体がしぼんで貧相に見えるんです」とおっしゃる方。確かに体重計の数字は減っている。けれど、ご本人が望んでいた「引き締まった体」とは違う方向に進んでしまっている。
これは、炭水化物を抜くことで知らないうちにカロリーが足りなくなり、体が筋肉を削ってエネルギーにしてしまった結果であることが少なくありません。体重は落ちても、減ったのは脂肪だけではなかった。まさか筋肉まで、と驚かれます。落としたかったのは脂肪だったはずなのに、これではもったいないですよね。
自分に合った痩せ方を、一度きちんと整理してみませんか。
表参道プライベートジム BODY DIRECTOR では、
運動と栄養の両面から、一人ひとりに合わせた体づくりをサポートしています。
炭水化物を減らすだけ、の落とし穴。正しい栄養の考え方
痩せる方法には、カロリーをマイナスにするやり方のほかに、三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)の摂取割合を変えるやり方もあります。有名になったのは、炭水化物(糖質)の割合を減らす方法です。ただ、ここに大きな落とし穴があります。
多くの方は、炭水化物を減らすことで、結果的に低カロリーの状態を作ってしまっています。一見うまくいっているように見えますが、必要なカロリーまで足りなくなる恐れがあるのです。そうなると、先ほどの体験談のように、体重は落ちても筋肉量が低下してしまいます。これでは、健康的にも見た目的にも望ましくありません。
正しくは、脂質とタンパク質の量を増やしたうえで、炭水化物の割合を減らすことです。こうすることで、脂肪の蓄積を抑え、血糖値を安定させ、ケトン体(糖が少ないときに脂肪から作られる、体のエネルギー源)が作られ、脂肪が燃えやすい状況を整えることができます。同じ「糖質を減らす」でも、ただ抜くのと、脂質・タンパク質で正しく補うのとでは、結果がまるで変わってくるのです。
なぜ血液検査を見るのか
BODY DIRECTORでは、栄養指導の際に血液検査のデータを見ます。理由は二つあります。一つは、その方の体が、いま脂肪を燃やせる状態にあるのかを確認するため。もう一つは、エネルギー代謝がきちんと回るために必要な栄養素が、足りているかどうかを確認するためです。
脂肪を燃やすにも、代謝を回すにも、体の中ではさまざまな栄養素が歯車のように働いています。どれか一つでも欠けていると、せっかくの食事改善も空回りしかねません。血液検査は、その歯車がそろっているかを知るための、確かな根拠になります。なんとなくの自己流ではなく、データを土台に組み立てる。これが、遠回りに見えていちばん確実な道だと、私は考えています。
スクワットそのものが体にもたらす効果については、別の記事で詳しくまとめています。あわせて読みたい方は、スクワット効果の新事実:科学が証明する8つの驚きのメリットもご覧ください。痩せることだけでなく、スクワットが持つ幅広い価値が見えてきます。
炭水化物を減らす食事やケトン体を使う食事は、すべての人に向いているわけではありません。特に、腎臓や肝臓に持病がある方、糖尿病などで服薬中の方は、自己判断で行わず、必ず医師にご相談ください。また、栄養の最適なバランスは年齢・体質・生活によって個人差が大きく、この記事で述べた一般論がそのまま全員に当てはまるわけではありません。紹介した研究も、対象や期間に限りがあります。本当に自分に合った方法は、データと専門家の評価を通して見えてきます。
まとめ スクワットは「痩せる魔法」ではなく、土台を支えるもの
「スクワットで痩せる」は、半分本当で、半分は誤解でした。スクワット中に消費するカロリーは小さく、それだけで痩せるわけではありません。けれど、運動後に代謝が高まる追い風は確かにあり、痩せやすさを後押ししてくれます。ただしそれは、スクワットだけの特別な力ではないことも、正直にお伝えしました。
痩せるかどうかを最終的に決めるのは、食事とエネルギー収支です。順番は、運動より先に食事を整えること。そして炭水化物をただ抜くのではなく、脂質とタンパク質で正しく補い、筋肉を守りながら脂肪を落とすこと。その土台の上でこそ、スクワットは痩せやすい体を支える、頼もしい味方になります。まずは今日の食事を、少しだけ振り返ることから始めてみてください。
運動と栄養、両方そろえて、はじめて体は変わります。
表参道プライベートジム BODY DIRECTOR では、
アーティスト・俳優・ビジネスパーソンの身体管理を個別にサポートしています。
- Burt DG, Lamb K, Nicholas C, Twist C. Effects of exercise-induced muscle damage on resting metabolic rate, sub-maximal running and post-exercise oxygen consumption. Eur J Sport Sci. 2014;14(4):337-44. doi:10.1080/17461391.2013.783628(PubMedにて確認)
- Greer BK, O’Brien J, Hornbuckle LM, Panton LB. EPOC Comparison Between Resistance Training and High-Intensity Interval Training in Aerobically Fit Women. Int J Exerc Sci. 2021;14(2):1027-1035. doi:10.70252/ODIN6912(PubMedにて確認)
- Aragon AA, Schoenfeld BJ, Wildman R, et al. International society of sports nutrition position stand: diets and body composition. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:16. doi:10.1186/s12970-017-0174-y(PubMedにて確認)
1977年生まれ。2002年パーソナルトレーナーとして開業。2005年、日本で初めてとなる完全個室の表参道プライベートジム「BODY DIRECTOR」を設立。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中心。筋トレだけでは健康効果に限界があるとの考えから、生化学を基にした栄養指導、自律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供。
法人クライアント:ポニーキャニオン(IRORI Records)、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、トイズファクトリー、トランジットジェネラルオフィス、ラストラムミュージックほか。