堂々として見える人とそうでない人は何が違うのか 姿勢と身体の安定感という観点から考える
TOMOYUKI SHIMAWAKI(島脇 伴行) トレーナー/ヘルスコーチ|BODY DIRECTOR
トレーナー・ヘルスコーチとしての現場観察に基づく考察
- ●「堂々として見える」かどうかが、気持ちだけでなく身体の状態から決まる理由がわかる
- ●同じことをしていても、頼りなく見える人と堂々と見える人の違いがわかる
- ●見え方を左右する肩・胸郭・視線という3つの身体要素がわかる
- ●「気持ちを変える」より「身体を整える」ほうが近道になる理由がわかる
- ●身体を整えても変わらないと感じるとき、何を考えるべきかがわかる
ステージに立つ。カメラの前に立つ。人前で何かを表現する。そのとき、同じことをしていても、堂々として見える人と、どこか頼りなく見える人がいます。モデルや表現者にとって、この「見え方」は死活問題です。多くの場合、それは「自信」や「メンタル」の問題として語られます。ですが、私はトレーナー、ヘルスコーチとして多くのモデルや表現者の身体を見てきて、その「見え方」の差が、実は身体の状態から生まれている部分が大きいことに気づきました。この記事では、堂々として見える人とそうでない人は何が違うのかを、姿勢と身体の安定感という、身体側の観点から考えます。
<体験談> 「自信がなさそう」と言われ続けたモデル
あるモデル志望の方が、オーディションでいつも「自信がなさそうに見える」と言われることに悩んでいました。本人は、人前で堂々とするよう意識していたし、メンタルを強くしようと自己啓発の本もたくさん読んでいた。それでも、写真や映像に映る自分は、どこか縮こまって見える。
身体を見せてもらって、理由がわかりました。この方は、肩がすくみ、胸郭が落ち込み、呼吸が浅くなっていました。本人は「気持ちの問題」だと思い込んでいましたが、見え方を決めていたのは、気持ちよりもまず身体の状態でした。肩がすくんでいれば、どんなに前向きな気持ちでいても、見た目には緊張して見えます。私はまず、心ではなく身体から整えることを提案しました。
「堂々として見える」は気持ちだけの問題ではない
「自信がないから、自信がなさそうに見える」。これは一見もっともらしい説明です。確かに、心の状態は姿勢に表れます。ですが、順番は逆方向にも働きます。身体の状態が、その人の「見え方」を決めている部分が、実はとても大きいのです。
考えてみてください。堂々として見える人を思い浮かべると、たいてい共通の身体的特徴があります。肩が上がっておらず、首が長く見え、胸が開いていて、視線がまっすぐ前を向いている。呼吸が深く、動きに余裕がある。逆に、頼りなく見える人は、肩がすくみ、背中が丸まり、視線が下がり、呼吸が浅い。
これらは、すべて身体の状態です。気持ちの持ちようではなく、筋肉や骨格、呼吸のあり方の問題です。つまり、見え方を変えたいなら、まず身体を整えるという入口があるのです。心を変えるのは時間がかかりますが、身体は、より直接的にアプローチできます。
見え方を決める3つの身体要素
私が現場で見てきた範囲で、「堂々として見える」印象を作っている身体の要素を整理すると、大きく3つあります。
これらに共通するのは、「意識して作る」ものではなく、「身体が整った結果として現れる」ものだということです。撮影の現場で「もっと自信を持って」と言われても難しいのは、それが気持ちの指示だからです。身体が整っていれば、特別に意識しなくても、堂々とした見え方は自然に生まれます。
<体験談②> 身体から整えたら、印象が変わった
先ほどのモデル志望の方には、メンタルの話はいったん置いて、身体から取り組んでもらいました。肩周りの緊張を取り、胸郭を支える筋肉を働かせ、頭を支える体幹を整える。特別なことではなく、これまでの記事で触れてきた姿勢の基本を、丁寧に積み上げていきました。
しばらくすると、本人が何も「演技」をしていないのに、写真に映る印象が変わってきました。肩の力が抜け、胸が自然に開き、視線が安定した。事務所からも「最近、雰囲気が出てきたね」と言われたそうです。本人にとっては、えっ、気持ちを変えたわけじゃないのに、という驚きだったと思います。身体が整ったことで、見え方が後からついてきたのです。心を変えようと頑張るより、身体を変えるほうが、結果的に近道だったということです。
人前での「見え方」を、身体から変えたい方へ。
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身体を整えても変わらないと感じるとき
ここまで、見え方は身体の状態から作れる、とお伝えしてきました。これは、私が現場で実感していることです。ただ、正直に申し上げておきたいことがあります。
身体を整えても「見え方」が思うように変わらない、あるいは、人前に立つこと自体がつらい、という場合があります。そういうときは、身体だけの問題ではないかもしれません。人前での強い不安や、気持ちの落ち込みが背景にある場合、姿勢を整えるだけでは解決しないことがあります。これは身体の専門家の領域を超えた問題で、その場合は、心理の専門家に相談することが適切です。身体から入ることは有効な入口ですが、それがすべてではない、ということも、正直にお伝えしておきます。
本記事で述べた「身体の状態が見え方に影響する」という内容は、私がトレーナー、ヘルスコーチとして現場で観察してきたことに基づくものであり、測定された科学的エビデンスとして提示するものではありません。身体の状態と他者から受ける印象の関係には個人差があり、すべての人に同じように当てはまるとは限りません。また、本記事は身体側からのアプローチを扱ったものであり、心理的な問題の解決を目的とするものではありません。人前に立つことへの強い苦痛や、気持ちの落ち込みが続く場合は、身体へのアプローチだけでなく、心理の専門家への相談をご検討ください。
まとめ 見え方は、身体から作れる
堂々として見える人とそうでない人の違いは、気持ちだけの問題ではありません。肩の力が抜けているか、胸郭が開いているか、視線と頭の位置が安定しているか。こうした身体の状態が、その人の「見え方」を大きく左右しています。
モデルや表現者にとって、「もっと自信を持って」という言葉は、しばしば実行が難しいものです。気持ちは、意識してすぐに変えられるものではないからです。ですが、身体は違います。肩周りを整え、胸郭を支え、頭の位置を安定させる。こうした身体側の取り組みは、具体的で、積み上げが効きます。そして身体が整えば、見え方は後からついてきます。
もし「人前での自分の見え方を変えたい」と感じているなら、気持ちを奮い立たせる前に、まず身体を整えるという入口を試してみてください。まずは、ご自身の体型や姿勢の傾向を知ることから始めてみてください。BODY DIRECTORのサイトでは、簡単なボディタイプ診断を用意しています。
なお、この「存在感」がなぜ生まれるのかを、重心の揺れ方という観点から、査読済みの研究データをもとにさらに詳しく掘り下げた記事もあります。ご関心のある方は「「オーラ」を数値で読む 重心の揺れ方が、ステージの存在感をつくっている」もあわせてご覧ください。
姿勢の全体像については「モデルに必要な姿勢は「背筋を伸ばす」だけで作れるのか」、肩周りの整え方については「巻き肩を直しても見た目が変わらないのはなぜか」もあわせてご覧ください。
姿勢・身体の使い方・見え方のお悩み、まずはご相談ください。
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歌手・俳優・ステージモデルなど、声と身体を使う表現者のための身体づくりコミュニティ「VOICE COMMU」では、運動・施術・栄養・心理の4つの視点から、現場で見えてきたことを発信しています。表現者を支える側を目指す方にも。
VOICE COMMU の紹介を読む →1977年生まれ。2002年パーソナルトレーナーとして開業。2005年、日本で初めてとなる完全個室の表参道プライベートジム「BODY DIRECTOR」を設立。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中心。筋トレだけでは健康効果に限界があるとの考えから、生化学を基にした栄養指導、自律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供。
法人クライアント:ポニーキャニオン(IRORI Records)、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、トイズファクトリー、トランジットジェネラルオフィス、ラストラムミュージックほか。