引き締まった体と痩せている体は何が違うのか 栄養状態と見え方の観点から考える
TOMOYUKI SHIMAWAKI(島脇 伴行) トレーナー/ヘルスコーチ|BODY DIRECTOR
参考文献:査読済み臨床試験・系統的レビュー
- ●痩せているのに「生気がない」と言われる背景に、低栄養が関係している理由がわかる
- ●食事を減らすダイエットがなぜ見た目の美しさを損なうのか、利用可能エネルギー不足の観点から理解できる
- ●痩せ型のモデルに胃腸の不調が多い理由を、エネルギー不足と消化機能の関係から理解できる
- ●「痩せている体」と「引き締まった体」は何が違うのか、栄養状態と筋肉の観点から理解できる
- ●自分の栄養状態が足りているかどうか、自己判断の限界と専門家に相談すべきタイミングがわかる
体重は落ちた。目標の数字にも届いた。それなのに、鏡に映る自分は、思い描いていた「美しい体」とは少し違う。なぜか生気がなく、疲れて見える。モデルやモデル志望の方を見ていると、こういう状態に陥っている方が少なくありません。「痩せている」ことと「引き締まって美しい」ことは、実は別のものです。その違いを分けているのが、栄養状態です。私はトレーナー、ヘルスコーチとして、多くのモデルの身体を見てきましたが、本当に魅力的に見える体には、ある共通点があります。この記事では、引き締まった体と、ただ痩せている体は何が違うのかを、栄養状態と見え方という観点から考えます。
<体験談> 目標体重に届いたのに、「生気がほしい」と言われた
あるモデルの方が、減量に成功して来られました。目標としていた体重に到達し、本人も達成感を感じていました。ところが、所属事務所からの言葉は意外なものでした。「悪くないけど、もう少し生気がほしいね。」
本人は戸惑っていました。あれだけ頑張ったのに、なぜ評価されないのか。実際に身体を見せてもらうと、確かに細くはなっていました。ですが、肌にツヤがなく、どこか青白い。髪もパサついていて、表情にも張りがありませんでした。
話を聞くと、減量のために食事を極端に減らし、特に炭水化物と脂質をほとんど摂っていない状態が続いていました。体重という数字は目標に届いたけれど、その代償として「生命力」が失われていたのです。この方に足りなかったのは、さらなる減量ではなく、栄養でした。
痩せているのに美しく見えない理由
「痩せれば美しくなる」というのは、ある範囲までは正しいです。余分な脂肪が落ちれば、ボディラインは整います。ですが、ある一線を超えると、痩せることと美しさは逆方向に進み始めます。モデルやモデル志望の方ほど、この一線を越えやすい環境に置かれています。
その境目を分けているのが、栄養状態です。体重という数字は、あくまで重さの指標にすぎません。同じ体重でも、栄養が行き届いている体と、不足している体では、見た目がまったく違います。肌のツヤ、髪のコシ、目の力、表情の張り。これらは体重計には表れませんが、見た目の印象を大きく左右します。そして、これらはすべて、栄養状態に直接影響を受ける部分です。
スポーツ医学の分野では、運動量に対して食事から摂るエネルギーが足りない状態を「利用可能エネルギー不足(LEA: Low Energy Availability)」と呼びます。この状態が続くと、身体は限られたエネルギーを生命維持に最優先で回すため、肌や髪のような「後回しにできる」部分への供給が削られます。
国際オリンピック委員会(IOC)の合意声明(REDs)では、利用可能エネルギー不足が、消化器系・内分泌系・骨代謝・免疫系・心血管系・心理面など、多くの身体システムに広範な悪影響を及ぼすことが報告されています。これは女性だけでなく男性にも及ぶとされています(PubMedにて確認)。
エネルギー不足の影響は、こうした形で見た目に現れます。
食べないダイエットが生む悪循環
体重を落とそうとして食事を減らす。これは一見、合理的に思えます。ですが、極端な食事制限は、しばしば「痩せにくく、美しくなりにくい」体を作ってしまいます。その鍵になるのが、胃腸の状態です。
エネルギー不足が胃腸を壊す構造
私の現場経験では、痩せ型のモデルには、胃腸の状態が悪い方が多い傾向があります。食べると張る、消化が遅い、便秘が続く。本人は「もともと胃腸が弱い体質だから」と考えていることが多いのですが、実際にはエネルギー不足そのものが、消化機能を低下させているケースがあります。
男性アスリートを対象にした研究では、低エネルギー利用可能性の代替指標と、消化器機能の障害との間に有意な関連が報告されています。LEAは消化器系だけでなく、心血管系や心理面、トレーニングへの反応低下とも関連していました(PubMedにて確認)。
ここで悪循環が生まれます。エネルギーが不足する。すると消化機能が落ちる。消化機能が落ちると、せっかく食べたものからの栄養吸収も悪くなる。吸収が悪くなれば、さらに栄養が足りなくなる。この繰り返しです。食べる量を減らせば減らすほど、栄養を取り込む力そのものが弱っていく。だからこそ、「食べないこと」が、必ずしも「美しくなること」につながらないのです。
この悪循環から抜け出すには、ただ食事量を戻すだけでは不十分なこともあります。胃腸の状態そのものを整えながら、少しずつ栄養を取り込める身体に戻していく必要があります。
<体験談②> 食べることへの抵抗を超えて
先ほどのモデルの方に、食事を見直すことを提案したとき、最初は強い抵抗がありました。「太るのが怖い」というのです。長く減量を続けてきた人ほど、食べることへの不安は大きいものです。
そこで、いきなり量を増やすのではなく、まず胃腸の状態を整えることから始めました。消化に負担の少ない食事から少しずつ、栄養の質を上げていきました。数週間後、本人が驚いていました。お腹の張りが取れてすっきりし、何より、肌のツヤが戻り、表情が明るくなったのです。
次のオーディションでは、事務所から「今回はいいね」と言われたそうです。本人にとっては、えっ、と思うような変化だったと思います。足りなかったのは、我慢ではなく、栄養だったのです。
栄養と体づくりを、自分に合った形で見直したい方へ。
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引き締まった体と痩せている体の違い
ここまで見てきたように、「痩せている体」と「引き締まった体」は、似ているようでまったく違います。痩せている体は、ただ重さが軽い体です。引き締まった体は、適度な筋肉があり、栄養が行き届き、生命力を感じさせる体です。
栄養状態が良いとは
栄養状態が良い体には、共通の特徴があります。筋肉にハリがある。肌にツヤがある。目に力がある。これらは、体重計の数字には表れません。むしろ、適度な筋肉がある分、極端に痩せた体よりも数字の上では重くなることさえあります。ですが、見た目の魅力は、数字とは別のところで決まります。
そしてもう一つ、大切なことがあります。それは、自分のボディタイプに合ったボディラインを作る、ということです。骨格や筋肉のつき方は、人によって生まれつき異なります。筋肉質で骨格が大きい人が、ごく細い体型を目指すこと自体に、そもそも無理があります。無理な目標を設定すれば、待っているのは過度な食事制限と、その先の低栄養です。
大切なのは、他人の数字を追いかけることではなく、自分の骨格に合った、最も魅力的なラインを見つけることです。まずは、ご自身の体型の傾向を知ることから始めてみてください。BODY DIRECTORのサイトでは、簡単なボディタイプ診断を用意しています。自分のタイプを知ることが、無理のない目標設定の第一歩になります。
本記事で紹介した利用可能エネルギー不足(LEA)に関する研究は、主にアスリートを対象としたものであり、モデルへの直接的な適用には限界があります。また、低栄養が肌や髪、表情に与える影響については、トレーナーの現場経験に基づく観察であり、定量的に測定されたエビデンスではありません。食事や栄養の調整は、体調や既往歴によって適切な方法が異なります。
食べることへの強い恐怖、体重の急激な減少、月経の停止、強い消化器症状などが続く場合は、専門的な治療が役立つことがあります。一人で抱え込まず、医療機関や、お住まいの地域の摂食障害支援拠点機関、摂食障害情報ポータルサイト(edportal.jp)などの相談窓口を頼ってください。
まとめ 魅力的な体には、生命力が宿っている
引き締まった体と、ただ痩せている体の違いは、栄養状態にあります。体重という数字を追いかけて食事を削っても、栄養が足りなければ、肌のツヤも、髪のコシも、表情の力も失われます。痩せることと、美しくなることは、ある一線を超えると逆方向に進み始めるのです。
そして、食べないダイエットは、胃腸の機能を落とし、栄養を取り込む力そのものを弱らせる悪循環を生むことがあります。大切なのは、我慢して減らすことではなく、自分のボディタイプに合ったラインを、栄養を行き届かせながら作っていくことです。
モデルにとって魅力的な体とは、姿勢や体の引き締まりに加えて、生命力を感じさせるものだと、私は考えています。肌のツヤ、目の力、表情の張り。それらは、栄養が行き届いた身体からしか生まれません。もし「体重は落ちたのに、なぜか美しく見えない」と感じているなら、一度、栄養状態という観点から自分の身体を見直してみてください。姿勢の全体像については「モデルに必要な姿勢は「背筋を伸ばす」だけで作れるのか」もあわせてご覧ください。
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歌手・俳優・ステージモデルなど、声と身体を使う表現者のための身体づくりコミュニティ「VOICE COMMU」では、運動・施術・栄養・心理の4つの視点から、現場で見えてきたことを発信しています。表現者を支える側を目指す方にも。
VOICE COMMU の紹介を読む →- Mountjoy M, Ackerman KE, Bailey DM, et al. 2023 International Olympic Committee’s (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs). British Journal of Sports Medicine. 2023;57(17):1073-1097. doi:10.1136/bjsports-2023-106994(PubMedにて確認)
- Holtzman B, Kelly RK, Saville GH, et al. Low energy availability surrogates are associated with Relative Energy Deficiency in Sport outcomes in male athletes. British Journal of Sports Medicine. 2024;59(1):48-55. doi:10.1136/bjsports-2024-109165(PubMedにて確認)
1977年生まれ。2002年パーソナルトレーナーとして開業。2005年、日本で初めてとなる完全個室の表参道プライベートジム「BODY DIRECTOR」を設立。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中心。筋トレだけでは健康効果に限界があるとの考えから、生化学を基にした栄養指導、自律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供。
法人クライアント:ポニーキャニオン(IRORI Records)、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、トイズファクトリー、トランジットジェネラルオフィス、ラストラムミュージックほか。