・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
・株式会社フィットネス&コミュニティ代表
・プライベートジムBODY DIRECTOR代表
・YouTubeチャンネル
- ● 60代から筋トレを始めると、脳の「実行機能」が10〜12%改善する(JAMA研究)
- ● 週1回でも効果がある科学的根拠
- ● 「脳トレより筋トレ」が有効な理由
- ● 60代経営者が取り組むべき具体的な処方
目次
Toggle60代の経営者が感じる「判断力の衰え」は実行機能の低下かもしれません
「複数の案件を同時に処理するのが、以前より難しくなった」
「会議中に、集中が途切れることが増えた」
「重要な判断を、先送りにしてしまうことがある」
60代の経営者の方から、このような声をよくお聞きします。
これらの症状は、加齢による「実行機能(Executive Function)」の低下のサインかもしれません。
実行機能とは、判断力、注意力、段取り力、臨機応変に対応する力──経営者として最も大切な脳の機能です。
しかし、最新の研究は、この実行機能が筋力トレーニングによって回復できることを示しています。
60代こそ筋トレが必要な理由|日本の経営者データから
社長の平均年齢は63.59歳
2024年、東京商工リサーチの調査によると、日本の社長の平均年齢は63.59歳で過去最高を更新しました。
- 60代の社長:26.9%(最多)
- 70代以上の社長:34.4%
日本の社長の3人に1人以上が60代以上という現実があります。
70代になると業績に差が出る
同じ調査では、社長の年代と業績に相関関係があることも示されています。
| 社長の年代 | 増収企業の割合 |
|---|---|
| 30代以下 | 60.9% |
| 70代以上 | 44.3% |
「赤字」企業の割合も70代以上が最も高い結果となっています。
この差の原因はさまざまですが、60代のうちに「判断力を維持する投資」をしておくかどうかが、70代以降の経営を左右する可能性があると言えます。
実行機能とは何か|経営判断を支える3つの脳機能
実行機能は、主に3つの要素から構成されます。
1. 抑制制御(Inhibitory Control)
衝動的な反応を抑え、適切な判断をする力です。
経営での例
感情的な反発を抑えて冷静に交渉を進める、部下の失敗に対して建設的なフィードバックを行う
2. ワーキングメモリ(Working Memory)
複数の情報を同時に保持し、処理する力です。
経営での例
会議中に複数の論点を整理しながら最適な結論を導く、財務データと市場動向を同時に考慮して投資判断を下す
3. 認知柔軟性(Cognitive Flexibility)
状況の変化に応じて思考や行動を切り替える力です。
経営での例
画通りにいかないとき瞬時に代替案を考える、市場環境の急変に対して戦略を柔軟に修正する
これらはすべて経営判断に直結する能力であり、前頭前野という脳の領域が萎縮することで、60代以降に顕著な影響が出始めます。
筋トレで実行機能が12%向上|JAMA研究の詳細
Liu-Ambrose研究(2010年)の概要
2010年、カナダのブリティッシュコロンビア大学のTeresa Liu-Ambrose博士らが、権威ある医学誌「JAMA Internal Medicine」に発表した研究があります。
1,040回以上引用された、この分野の基礎となる研究です。
研究デザイン
- 対象:65〜75歳の女性155名(認知機能は正常)
- 介入:週1回または週2回の筋力トレーニングを12ヶ月間
- 比較対象:週2回のバランス・ストレッチ運動
評価指標は「ストループテスト」という、選択的注意力と葛藤解決能力を測定する検査でした。
結果:週1回でも効果あり
| グループ | パフォーマンス変化 |
|---|---|
| 週2回の筋トレ群 | +10.9%改善 |
| 週1回の筋トレ群 | +12.6%改善 |
| 対照群(バランス運動) | -0.5%悪化 |
注目すべきは、週1回でも効果があったという点です。
忙しい経営者でも、月に4回、年間48回のトレーニングで、経営判断の質を維持・向上できる可能性があります。
なぜ筋トレが脳に効くのか|3つのメカニズム
1. BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加
筋肉を動かすと「アイリシン」というホルモンが分泌され、脳でBDNFの産生を促します。BDNFは「脳の肥料」とも呼ばれ、神経細胞の新生・成長を促進します。
2. 前頭前野の活性化
筋力トレーニング中は、動作への集中、身体位置の監視、力の調整が必要です。これらの認知的要求が前頭前野を活性化させます。
3. 脳血流の改善
運動により脳血流が増加し、酸素と栄養素の供給が改善されます。脳は全身の酸素消費量の20%を使う「大食漢」の臓器であり、血流改善は脳機能に直結します。
3. 脳血流の改善
運動により脳血流が増加し、酸素と栄養素の供給が改善されます。 脳は全身の酸素消費量の20%を使う「大食漢」の臓器であり、 血流改善は脳機能に直結します。
2025年最新研究|脳トレより筋トレが効果的
メタアナリシスの結果
2025年に発表された最新のメタアナリシス(Frontiers in Psychiatry)では、 17のランダム化比較試験、739名のデータを統合分析しました。
筋力トレーニングの認知機能への効果
- ・全体的認知機能:効果量 0.40(有意な改善)
- ・ワーキングメモリ:効果量 0.44(有意な改善)
- ・空間記憶スパン:効果量 0.63(大きな改善)
最適な処方
同じく2025年のネットワークメタアナリシス(Frontiers in Aging Neuroscience)では、 認知機能改善に最も効果的な運動の処方を分析しました。
筋力トレーニングの結果
- ・全体的認知機能に最も効果的(効果量 0.55)
- ・抑制制御能力に最も効果的(効果量 0.31)
- ・最適処方:週2回・45分・12週間
脳トレとの比較
パズルや計算ゲームなどの「脳トレ」は、 特定の課題(訓練したパズルを解く能力など)には効果がありますが、 全般的な認知機能への改善効果は限定的です。
一方、筋力トレーニングは 日常生活での判断力や注意力全般に波及する効果が確認されています。
結論:脳を鍛えたければ、筋肉を鍛える──これが科学の示す答えです。
60代の筋トレはウェルビーイングにも効果的
メンタルヘルスへの効果
2024年のメタアナリシス(Psychiatry Research)による結果:
| 指標 | 効果量 |
|---|---|
| うつ症状 | -0.94(大きな改善) |
| 不安症状 | -1.33(非常に大きな改善) |
「大きな効果」の基準(0.8以上)を大きく上回っています。
人生満足度・自己効力感への効果
2023年の研究(MDPI Behavioral Sciences)では、 定期的に運動している65歳以上の男性は:
- ・人生満足度が有意に高い
- ・自己効力感(自分はやれる、という感覚)が有意に高い
- ・自尊心が有意に高い
60代は事業承継の問題、役割の変化、身体の衰えへの不安など、 さまざまな心理的課題に直面する時期です。
筋力トレーニングは、認知機能だけでなく、 人生の充実感を高める投資でもあります。
60代から筋トレを始める際の注意点
自己流に注意が必要な理由
60代から始める場合、自己流には注意が必要です。
- ・関節や筋肉の状態が若い頃とは異なる:無理なフォームは怪我のリスクがあります
- ・代償動作で効かせたい筋肉に効いていない:効果が出にくく、別の部位を痛める原因に
- ・継続が難しい:成果が見えにくいとモチベーションが続きません
研究が示す最適な処方
| 項目 | 推奨 |
|---|---|
| 頻度 | 週1〜2回(週1回でも効果あり) |
| 時間 | 1回45〜60分 |
| 期間 | 12週間以上 |
| 強度 | 中強度(会話ができる程度〜ややきつい程度) |
| 種目 | スクワット、デッドリフトなど複合運動 |
専門家の指導のもとで行うことで、 安全かつ効果的にトレーニングを続けられます。
まとめ|60代は「身体への投資」の時期
60代は「人生100年時代の折り返し地点」です。
ここで身体に投資しておくかどうかで、 70代、80代の経営者人生、そして引退後の人生の質が大きく変わります。
この記事のポイント
- ・実行機能(判断力、注意力、認知柔軟性)は経営の核心
- ・筋力トレーニングで10〜12%の改善(JAMA研究)
- ・週1回でも効果あり
- ・「脳トレより筋トレ」のほうが全般的認知機能に効果的
- ・うつ・不安症状、人生満足度にも好影響
「老化だから仕方ない」と諦めるのか。 「変化だから対処できる」と捉えるのか。 その違いが、人生の後半戦を決めます。
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BODY DIRECTORは、2005年に開業した 日本で最初の完全個室パーソナルジムです。
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当店では、年齢や体質で運動に不安を持っている方向けに シニアプログラムを提供しています。
- ・トレーニング後に必ずストレッチ整体を実施
- ・姿勢の改善や怪我の予防にも効果
- ・病院での治療後のリハビリとしても利用可能
初回カウンセリングのご案内
入会を検討される方には、代表の島脇が直接お話を伺います。
お問い合わせフォームから 「ブログ見ました」と添えてお申し込みください。
参考文献
- ・東京商工リサーチ「社長の平均年齢調査」(2024)
- ・内閣府「令和5年版高齢社会白書」
- ・Liu-Ambrose, T. et al. (2010). JAMA Internal Medicine
- ・Frontiers in Psychiatry (2025)
- ・Frontiers in Aging Neuroscience (2025)
- ・Psychiatry Research (2024)
- ・MDPI Behavioral Sciences (2023)
関連リンク
*60代からのスクワット|正しいフォームと効果
https://bodydirector.com/blog/2024-04-22/
*経営判断の質を決める「メタ認知」は、なぜオフィスではなくトレーニングルームで育つのか
https://bodydirector.com/blog/2026-02-19/
*シニアプログラムのご案内
https://bodydirector.com/blog/2023-02-14/