最新の研究では「筋トレ」が脳機能向上に驚くべき効果をもたらすことを明らかにしています。
そこで、脳の機能を最大化するためには、どのような筋トレプログラムが最適なのでしょうか?このブログでは、科学的根拠に基づいた「脳にとって最適な筋トレ」について解説します。
筋肉をつける、基礎代謝を上げるといった効果はよく知られていますが、実はスクワットには科学的に証明された「意外な効果」がたくさんあるんです。今日はその中から8つの驚きの効果をご紹介します!

・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
・株式会社フィットネス&コミュニティ代表
・プライベートジムBODY DIRECTOR代表
・YouTubeチャンネル
目次
Toggle頻度・強度・種類:最も脳に効果的な筋トレとは
最適な頻度
脳機能向上を目的とした場合、研究データによれば週2〜3回の筋トレが最も効果的です。興味深いことに、認知機能向上の観点からは、毎日の高頻度トレーニングは必ずしも「より良い」結果をもたらさないことが分かっています。
Liu-Ambroseらの研究(2012)では、高齢女性を対象にした週2回の筋トレが、週3回のバランストレーニングと同等以上の認知機能改善効果を示しました。
これは筋トレからの回復期間の確保が神経適応において重要であることを示唆しています。
効果的な強度
脳にとって最も効果的な強度は、中〜高強度(最大挙上重量の70-85%程度)とされています。この強度レベルでは以下の効果が最大化されます
- ・神経成長因子(BDNF、IGF-1)の分泌増加
- ・ストレス耐性の向上
- ・前頭前皮質の活性化
ただし、初心者の場合は最初から高強度で始めるのではなく、低〜中強度(最大挙上重量の50-65%)から始め、徐々に強度を上げていくアプローチが推奨されます。
特に高齢者では、強度よりも正確なフォームを優先することで、安全性を確保しながら認知効果を得ることができます。
最適な種類
脳機能向上のための筋トレは、単関節運動よりも複合運動(複数の関節を同時に動かす運動)の方が効果的です。複合運動は以下の理由から脳により強い刺激を与えます
- ・より多くの神経回路を活性化する
- ・協調性と運動制御の向上に貢献する
- ・より多くの筋肉量を刺激し、マイオカイン(筋肉から分泌される物質)の分泌を増加させる
特に効果的な複合運動には以下があります
- ・スクワット(特にフリーウェイト)
- ・デッドリフト
- ・ベンチプレスまたはプッシュアップ
- ・ローイング
- ・オーバーヘッドプレス
さらに、バランスの要素を取り入れた運動(不安定な面での筋トレなど)や、「デュアルタスク」(例:足でバランスボールを安定させながら上半身の筋トレを行うなど)は、脳の多領域を同時に活性化させるため特に効果的です。
年齢別の推奨アプローチ
脳のための筋トレは年齢によってアプローチを変えることで、より効果的になります。
若年層(20-40歳)
この年齢層では、神経可塑性が高く、より高強度のトレーニングに適応できます
- ・頻度: 週3〜4回
- ・強度: 中〜高強度(最大挙上重量の70-85%)
- ・セット数: 3〜4セット
- ・反復回数: 6〜12回
- ・推奨運動: 複合運動を中心に、筋力の全般的な向上と認知的チャレンジを組み合わせる
- ・特別な考慮点: 高強度インターバルトレーニング(HIIT)と筋トレの組み合わせが、BDNFと認知機能に相乗効果をもたらすことが研究で示されています
中年層(40-60歳)
この年齢層では、筋力と認知機能の維持・向上の両方が重要になります
- ・頻度: 週2〜3回
- ・強度: 中強度(最大挙上重量の60-75%)
- ・セット数: 2〜3セット
- ・反復回数: 8〜15回
- ・推奨運動: 複合運動に加え、バランスと協調性を高める運動を取り入れる
- ・特別な考慮点: この年齢層では回復時間がより重要になるため、筋トレの日と他の活動(有酸素運動など)の日を交互に設けることが効果的
研究によれば、この年齢層では特に定期的な筋トレが海馬の萎縮を防ぎ、記憶力低下を予防する効果があります。
高齢者(60歳以上)
高齢者にとって筋トレは特に重要で、認知症予防と機能的独立の維持に貢献します
- ・頻度: 週2回
- ・強度: 低〜中強度(最大挙上重量の50-65%)
- ・セット数: 1〜2セット
- ・反復回数: 10〜15回
- ・推奨運動: 機能的な動きを重視した複合運動、座った状態からでも行える適応バージョンの運動
- ・特別な考慮点: 安全性を最優先し、必要に応じてマシンを使用。ただし可能であればフリーウェイトや自重運動も取り入れる
Nagamatsu et al.(2012)の研究では、軽度認知障害の疑いがある高齢女性において、週2回のレジスタンストレーニングが記憶力や実行機能の改善、さらには海馬の機能的活性化をもたらすことが示されています。
実践的な筋トレルーティン例
初心者向け脳活性化筋トレルーティン(全年齢対象)
ウォームアップ
5分間の軽い有酸素運動(速歩き、軽いジョギングなど)
メインルーティン
ボディウェイトスクワット: 12-15回×2セット
壁プッシュアップまたは通常のプッシュアップ: 10-12回×2セット
ダンベルまたはチューブを使用したローイング: 12回×2セット
片足立ち(バランス強化): 各脚30秒×2セット
プランク: 30秒×2セット
認知強化エクササイズ
デュアルタスク:ダンベルシャッフル(小さなダンベルを両手に持ち、異なるパターンで動かす)
数を逆から数えながらプランクを行う
クールダウン
静的ストレッチとマインドフルネス呼吸法 5分間
週3回、部位を分けるスプリットルーティンとして実施することも可能。
注意点と禁忌事項
脳のための筋トレを行う際には、以下の点に注意することが重要です
注意すべき重要ポイント
適切なフォームを優先する
不適切なフォームは怪我のリスクを高めるだけでなく、脳への効果も減少させます。特に複合運動では正確な動作パターンが重要です。
過度なトレーニングを避ける
過剰な高強度トレーニングは逆にコルチゾール(ストレスホルモン)を慢性的に上昇させ、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。適切な回復期間を確保しましょう。
漸進的に負荷を上げる
神経適応を最大化するには、徐々に負荷を増やす「プログレッシブ・オーバーロード」の原則が重要です。ただし、高齢者では安全性を優先し、強度よりも一貫性を重視してください。
水分補給と栄養
脱水は認知機能を低下させます。また、運動後のタンパク質摂取は筋肉の回復だけでなく、運動による認知効果を最大化するのにも役立ちます。
併用する有酸素運動
最新研究によれば、同じセッション内で筋トレの前に10-15分の有酸素運動を行うと、BDNF分泌が増加し、認知効果が高まることが示されています。
禁忌事項と注意が必要なケース
未治療の高血圧
特に高強度の筋トレは一時的に血圧を上昇させるため、高血圧患者は医師の許可を得てから開始し、適切な強度と呼吸法を学ぶことが重要です。
神経疾患がある場合
パーキンソン病やMS(多発性硬化症)などの神経疾患がある場合は、専門家の指導のもとでカスタマイズされたプログラムを行ってください。適切に調整された筋トレは症状改善に役立つことがあります。
認知障害がある場合
認知症や重度の認知障害がある場合は、安全性を確保するために監督者の同伴が必要です。また、簡素化された動作と一貫した指示が重要です。
急性疾患や怪我からの回復期
完全に回復するまで高強度の筋トレは避け、医療専門家の指導に従ってください。
年齢による考慮
高齢者は特に最初の数週間はマシンの使用や座位での運動から始め、徐々にフリーウェイトや立位での運動に移行することが推奨されます。
【参考文献】
Liu-Ambrose, T., et al. (2012). Resistance training and executive functions: A 12-month randomized controlled trial.
Archives of Internal Medicine, 172(8), 666-668.
Nagamatsu, L. S., et al. (2012). Resistance training promotes cognitive and functional brain plasticity in seniors
with probable mild cognitive impairment. Archives of Internal Medicine, 172(8), 666-668.
Cassilhas, R. C., et al. (2016). Spatial memory is improved by aerobic and resistance exercise through divergent
molecular mechanisms. Neuroscience, 329, 237-248.
Herold, F., et al. (2019). Functional and/or structural brain changes in response to resistance exercises and
resistance training lead to cognitive improvements – a systematic review. European Review of Aging and Physical
Activity, 16
無料カウンセリングのご案内
私が運営する表参道のボディディレクターは完全個室のプライベートジムで、お客様一人ひとりに合わせたパーソナルトレーニングを提供しています。
ご興味をお持ちの方は下記リンクよりお申し込み下さい
https://bodydirector.com/counseling/