姿勢を正すことが発声には大切と言われますが、一体どういうことなのでしょうか。
古典的な風習としての姿勢矯正ではなく、その意味を理解できるよう解剖で説明します。
・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
・株式会社フィットネス&コミュニティ代表
・プライベートジムBODY DIRECTOR代表
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目次
Toggle姿勢が発声に関連する4要素
姿勢の評価は大きく3つの方向から行います。
A 矢状面:下の図のように横から見た姿勢です。巨視的な姿勢評価では主にこれを評価します。
B 前額面:体を前と後ろから見た姿勢です。右肩が上がる(下がる)左脚が短い(長い)といった評価です。
C 水平面:体を輪切りにした状態での評価。真上から見て、回旋があるかどうかを調べます。
姿勢を細かく見る際は、A,B,C全てを評価する必要がありますが、大きく巨視的に見るにはAの矢状面に注目します。
姿勢が崩れていると、本来の自然な機能を発揮することが難しくなります。
それは、例えば、腹腔(お腹の空間)、胸腔(主に肺)のスペースを確保することや、息を吐く時のスペースを小さくすることに支障が出てきます。それによって、息を吸うこと、吐くことに直接的に影響を与えます。
無理やり姿勢を良くするのではなく、筋肉の状態を整え、自然な姿勢を作ることによって、自然な呼吸の獲得や声帯のコントロール、また、咽頭腔の響きにも良い反応が現れます。
呼気
息を吐くという動作です。これによって声帯を振動させることができ、音を作ることができます。この息を吐くという動作は、肋骨には内肋間筋がついていますが、強く吐く際は特に腹筋群を使用します。外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋、腹横筋が使われます。
わかりやすいイメージとして、お腹がぽっこりと出ている時に、急にお腹を「息を吐きながら」引っ込めてください。この時にお腹の中のスペースが圧力で小さくなり、横隔膜が上に押し上げられ、肺のスペースが小さくなることで空気が体の外に押し出されます。
骨のS字カーブに負担がかかりすぎる事によって、背骨と背骨を繋ぐ椎間関節やその周りに負担がかかり固くなると、その付近を通っている神経に軽い圧迫が加わることが予測されます。
それによって、その影響の受ける神経が動かす筋肉の機能が低下する事になります。腹筋群の1つである「腹横筋」であれば、以下3つの神経から命令を受けています。
- ・肋間神経(胸椎10~胸椎12)
- ・腸骨下腹神経(腰椎1)
- ・腸骨鼠径神経(腰椎1)
このように、姿勢が崩れる事で、筋肉の本来の機能が低下する可能性が考えられます。
吸気
息を吸うという動作です。これは肋骨を引き上げ、肋骨のスペースを大きくすることで肺に空気が流れ込むという事
そして、横隔膜を押し下げることで肺のスペースを大きくする事、この2つによって獲得されます。
吸気に関係する筋肉は
首周り:胸鎖乳突筋(脳神経11及び頸椎2-3)、斜角筋(頸椎3-8) / 急激に吸うという動作の際に特に使用されます。
肋骨周り:傍胸骨内肋間筋(胸椎1-11)、外肋間筋(胸椎1-11)、横隔膜(頸椎3-5)
背中:脊柱起立筋群(頸椎から仙椎まで)、僧帽筋(頸椎3-4)
呼吸に関わる筋肉を知りたい方は、以下の動画で解説していますので、どうぞご覧になってください。
https://bodydirector.com/blog/2022-09-06/
この辺りの筋肉は頸椎と胸椎から出ている神経系に支配されているため、猫背や、頭が前に出て固定されているような姿勢をしている方は本来のパフォーマンスを発揮できていないであろうと予想できます。
声帯コントロール
これは直接声帯を動かす筋肉のことを指しています。具体的には以下の筋肉です。
- ・輪状甲状筋(迷走神経/脳神経10)
- ・声帯筋(声帯そのもの)(迷走神経/脳神経10)
- ・甲状披裂筋(迷走神経/脳神経10)
- ・横、斜披裂筋(迷走神経/脳神経10)
- ・後輪状披裂筋(迷走神経/脳神経10)
- ・外側輪状披裂筋(迷走神経/脳神経10)
このように、声帯と喉頭周辺の筋肉は全て迷走神経が支配しています。
脳幹から伸びる迷走神経は、頚部を下降しながら・上喉頭神経や下喉頭神経に枝分かれします。
迷走神経だけでなく、これらの神経も声帯や喉頭の筋肉に影響を与えます。
首や肩周りの筋肉が悪姿勢で緊張すると、迷走神経などの神経にも影響を与え、声帯機能が低下する場合があります。
この結果、発声で無理な力が入ることも考えられ、声帯負担の習慣が形成させる可能性も考えられます。
共鳴
共鳴はいわゆる「声を響かせる」ことを指しています。頭が響く、胸が響くという表現をさせる方がいますが、厳密にはこれは共振と言われるもので、その部位が振動しているという事になります。共鳴も共振の中に含まれますが、共鳴は声帯から唇までの声道でのみ起こります。
【共鳴部位】
- ・口腔:口の中での共鳴
- ・喉頭腔、下咽頭腔:声帯のすぐ上での共鳴(喉詰め、で、この空間が狭まる)
- ・中咽頭腔
- ・上咽頭腔:口蓋垂の後方
- ・鼻腔、副鼻腔:鼻の奥、おでこに響かせる、頬骨の下に響かせると言われる部位
姿勢が悪いことで、喉頭の位置が変化すると、整体に不自然な緊張を生じさせる可能性があります。声帯が適切に振動しないことで、共鳴が十分に起こらないという現象が起こります。
また、悪姿勢が首や喉や肩周りの筋肉を硬くします。凝りや張りで硬くなった筋肉は神経からの正常な指令が届きづらくなり、共鳴を起こす部位のコントロールが難しくなることも考えられます。
今回の記事では、姿勢と発声の関係の概要を説明しました。厳密には姿勢は矢状面だけではなく、前額面、水平面まで評価を行って修正します。
また、姿勢だけではなく、筋力バランスも適切であるかどうかも含めて歌うための体作りをすることで、歌唱のパフォーマンスは向上します。
私がボイストレーニングで指導してる事
私の専門は
- ・体を強く鍛えること
- ・姿勢を整えること
- ・整体などで筋肉を調整すること
- ・姿勢・体の使い方
- ・リラックス法
- ・持久力向上トレーニング
この辺りが専門になります。
また、声量を上げることもできますが、この場合は、正しい発声テクニックを獲得してからでないと、声帯振動が増すことによって喉を痛めるリスクがありますので注意が必要です。
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