健康経営の課題と期待「健康管理室の有用性」

第2回目「健康経営の効果」に続き第3回目(最終回)となる今回は健康経営の課題と期待「健康管理室の有用性」について考察します。

 


目次

1、「健康管理室」の目的

2、「健康管理室」の構成

3、「健康管理室」の課題

4、「健康管理室」の発展


 

この記事は経営者のパーソナルトレーニングを行う島脇伴行が記載しました。

 

記述者紹介

島脇伴行(Tomoyuki Shimawai)

アメリカスポーツ医学会認定 運動生理学士

株式会社フィットネス&コミュニティ代表 https://fitness-community.jp

プライベートジム BODY DIRECTOR代表 https://bodydirector.com

 

 

1、「健康管理室」の目的

 

健康管理室設置には理由があります。その説明には企業に設置される産業医の存在と役割を説明します。

 

「産業医の設置と役割」

 

1事業場の従業員数50人以上の企業では、産業医を設置しているケースが多い。産業医の業務は労働安全衛生法によって以下のように定められています。

 

昭和四十七年労働省令第三十二号

労働安全衛生規則

 

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第十四条 法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。

 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

 法第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導並びに法第六十六条の九に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

 法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第三項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

 作業環境の維持管理に関すること。

 作業の管理に関すること。

 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。

 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

 衛生教育に関すること。

 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

 

このように、産業医は健康診断のデータを確認し、必要な方には面談を行い、健康指導を行うことが求められます。そして、行政に対し、成果物として「定期健康診断結果報告書」を労働基準監督署に提出します。

 

ただ、この法律は、いわゆる従業員健康問題の根本の部分といったところでしょうか。それは、作業管理という労働環境に配慮することなどが記載されているにすぎないからです。もちろん、産業革命時のような劣悪な環境で業務を行わせているようであればこのようなルールは最重要となりますが、現代はこのような部分はほぼクリアしている事として話を進めます。
従業員の健康に対する具体的な取り組みとして、健康診断を実施することになりますが、産業医が従業員の隅々まで健康指導を実施し、健康問題、例えば運動や栄養や休息までの意識改革ができるかというと、これは困難といっても良いでしょう。つまり、さらに進んだ形態を作ることで、従業員の健康を高める健康経営を行うことになるということです。

 

そこで、健康経営を始める際どのような組織体制で行うかといった、組織構築が重要になります。そこで中心的役割を担う部署が「健康管理室」ということになります。

 

「健康管理室」とは何なのでしょうか。

健康経営のイニシアチブをとり、会社全体の健康増進を指揮指導する部署となります。

それは、営業部、人事部、企画部、総務部といった部署のように、従業員の健康増進を目的とした事業部です。

 

2、「健康管理室」の構成

 

【健康管理室実施のイベント】従業員が50人を超えた事業所(アルバイト、派遣も含む)

義務 定期健康診断及び結果報告書の提出(産業医による)

義務 衛生委員会の設置

・義務 ストレスチェック実施

 

<企画、プロジェクトマネジメント>

・健康管理室の連携取りまとめ

・経営陣、人事、総務への情報共有

・従業員とのリレーション

 

<産業医>

・定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出

・定期健康診断結果を踏まえた、従業員面接及び助言

・リスク保持者の共有

 

<事務職>

・産業医補助(データ入力など)

・各イベント補佐

・書類作りなど

 

<その他専門スタッフ>

・臨床心理士(高ストレス者への面談)

・健康講座講師(従業員への健康意識の構築)

・栄養アドバイザー など

 

このように、健康経営は

①スクリーニングを行う(従業員のリスク判別)「産業医の役割」

②健康アプローチの立案 「企画職が中心になる」

③健康アプローチの社内周知 「社内広報」

④健康アプローチの実施 「専門スタッフの協力による」

この①〜④のアプローチをPDCAで回し続け、効果検証を従業員アンケートや部署毎の労働生産性といった定量的に測定できるもので計測する必要があります。

 

3、「健康管理室」の課題

 

健康経営の課題を考えるには、まず、健康経営に期待している事を明確にする必要があります。

以下、企業の健康経営と取り入れる目的の順位はHPR総研、「健康経営」に関するアンケート調査結果報告より(上位7項目のみ記載)

 


1位 従業員の生産性維持向上

2位 企業全体の労働生産性向上

3位 従業員のモチベーション維持向上

4位 企業イメージの向上

5位 従業員のエンゲージメント向上

6位 社員の離職抑制 

7位 従業員間のコミュニケーション向上


 

このように、企業業績に直接関わる生産性、労働生産性の向上を主目的とする企業が多いことがわかります。これまでのブログ、1と2で説明してきたように、

 

ブログ1

https://bodydirector.com/blog/2022-07-19/(健康経営の大枠を解説)

ブログ2

https://bodydirector.com/blog/2022-07-27/(健康経営の効果)

 

休憩や睡眠が少なくなると、欠勤や生産性低下の相関が示されています。

また、特定保健指導による積極的支援(上記ブログ2)によって従業員の内科的な健康状態(長期間放置していることで生産性が落ちる要因となる可能性)に改善がみられるということが分かっています。

 

しかし、健康管理室を設置しても上手く機能していないというケースがあり、その課題を下記に記します。

 


【課題】

1、健康診断データを生かしきれていない

2、積極的支援必要者へのアプローチが中心となっている

3、企画内容、社内広報が不十分


 

1、健康診断データを生かしきれていない

 産業医はハイリスクの方に対して健康指導を年に1回もしくはそれ以上行うが、それ以外の方への関与は時間的に困難である。つまり、ハイリスクの従業員への関与はあるが、ハイリスク予備軍の方への対策はできていないことが多い。本来は健康診断のデータを用いて、将来的なハイリスク者を減らすことができると良い。

 

2、積極的支援必要者へのアプローチが中心となっている

 積極的支援が必要な方への保健指導が一定の効果あるということがデータによってわかりました。(https://bodydirector.com/blog/2022-07-27/)しかし、積極的支援必要者以外の方の健康支援によって、企業へのエンゲージメントや生産性向上に寄与することも健康経営を行う目的でもあります。そのためのアプローチが手薄になっている企業が多い。

 

3、企画内容や社内広報が不十分

 従業員の健康意識向上のために、例えば、健康教室を開催する、それらを告知するという方法がありますが、健康管理室の組織体制がうまく機能しておらず、社内周知が不十分であったり、参加への優先度が部署毎に異なったり、単発の企画で終わってしまうなどの理由から頓挫してしまうケースも少なくない。

 

健康状態は個人の身体的パフォーマンス、心理的状態に直結するものであり、それが部署、さらには企業全体に影響を与えることは明らかです。企業の最重要項目として取り組む必要性を今一度、経営者や人事担当者は考え、行動にでるタイミングではないでしょうか。

 

このように、健康診断という客観視できるデータを持ちながら、それを十分に活用できていないことが健康管理室だけではなく、企業の課題とすることができます。

 

 

4、「健康管理室」の発展

 

前項で健康管理室の課題を記載しました。それに対する解決策のヒントとなる内容、さらに発展できる考え方を記載します。

 

健康経営の2つの考え方
①ハイリスク者への対応(疾病モデル)病気の状態を元に戻す。
②従業員の能力を引き出す、パフォーマンスモデルへの取り組み。

 

両者のアプローチは大きく4つに分類できる
<運動の効果>
・定期的な運動実施への取り組み
<休息の効果>
・整体やストレッチ、マッサージなどでリフレッシュ
<栄養の効果>
・栄養価の高い食事の導入や知識構築
<メンタルへの取り組み>
・臨床心理士などによる定期的なカウンセリング
・グループワークによる定期的な協力作業

 

これらは従業員の健康状態を短期的に高め、業績への効果が期待できるものである。第1回のブログでエビデンスをみたように、高血圧、肥満などは業績への短期的な影響はなく、それよりも睡眠不足や疲労などでの業務効率低下が問題となっている。その部分への取り組みがパフォーマンスモデルとして取り組む事です。

 

また、運動のようにフィジカルに働きかける行為は、メンタルにも働きかけることが分かっており、例えば鬱状態にある人が抗うつ剤を飲むことと同等の効果がある。しかも運動には副作用がありません。

 

このように健康管理室が機能することによって、個人の健康状態が上向き、個人の能力が引き出されることはイメージできます。さらに、そのような状態である個人は生きがいも感じやすくなり、企業へのエンゲージメントも上昇するでしょう。それが企業の発展にも繋がります。

 

このような健康企業を目指すのであれば、健康の重要性を深く理解し、それを推し進めるリーダーの存在が重要です。それは言うまでもなく企業経営陣であり、彼らが率先して健康に取り組むことが必要でしょう。また、健康管理室を名ばかりのものとせず、そこが神経細胞のモーターニューロンのように、企業の核となるよう意識を注ぐようにすると良いでしょう。

 

記述者、島脇の情報一覧はこちらより

https://lit.link/shimachannel

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