健康経営の効果

第1回目「健康経営の概要を理解する」に続き、今回は第2回目「健康経営の効果」について解説します。

 

目次
◯ 従業員(アルバイト、パート含む)50名を超えると労働法令上4つの義務が発生
◯「健康経営」の投資対効果
◯「なぜ業績が上がる?」フィジカル面、メンタル面それぞれの理由

 

この記事は経営者のパーソナルトレーニングを行う島脇伴行が記載しました。

 

記述者紹介
島脇伴行(Tomoyuki Shimawai)
アメリカスポーツ医学会認定 運動生理学士
プライベートジム BODY DIRECTOR代表

 

 

◯従業員(アルバイト、パート含む)50名を超えると労働法令上4つの義務が発生

 

従業員が50名とは1事業所につき(正社員、契約社員、パート、アルバイト)の合計数が50名の事。支社(支店)が分かれる場合は、1つの箇所につき50名を超えた場合、適応となる。

 

【4つの義務】
1、産業医、衛生管理者の決定
2、衛生委員会の設置
3、定期健康診断結果報告書の提出(年1回)
4、ストレスチェックの実施(年1回)

 

このように企業規模が大きくなると従業員の健康管理に対する義務が発生します。
これをコストと捉えるか、投資と捉えるのかによってその意味合いは変わってきます。
健康経営は、従業員の健康管理をコストではなく企業戦略として考えます。
健康経営は疾病に対応するだけではなく、従業員のパフォーマンスを引き出す事にも繋がります。

 

健康経営の2つの考え方
①疾病モデル
 病気の状態を元に戻す
②パフォーマンスモデル
 能力を引き出す

 

 

健康経営の投資対効果

 

健康経営の実施は企業の生産性や業績にどのような影響を与えているのでしょうか。
下記図はその1例です。
米国の優良健康経営表彰企業に対して1万ドルを投資した場合(実線)と、米国の証券取引所に上場された代表的な500銘柄で構成されるS&P(スタンダード&プアーズ500株価指数)
平均に1万ドルを投資した場合(破線)との十数年後における投資成果を比べた仮想的な計算例です。

 

 

これを見ると、1999年時点における1万ドルの投資が、13年後の2012年には、優良健康経営表彰企業は1万7、871ドル余になっているのに対し、S&P500は9,923ドル余にとどまっており、優良健康経営表彰企業は米国の大企業平均を上回るパフォーマンスを上げていることがわかります。
ただ、これが「健康経営による業績向上」という因果関係を示しているのか、このデータだけではわかりません。(逆に「企業の業績が良いから健康経営に熱心に取り組んでいる」という可能性もあります)しかしながら、少なくとも健康経営度と企業業績の間には一定の相関があることは明らかに示されています。実務的には、これだけでも十分なエビデンスであると言えます。(平成29年7月、厚生労働省保健局作成資料より抜粋)

 

◯「なぜ業績が上がる?」フィジカル面、メンタル面それぞれの理由

 

以下のグラフは、「健康経営と株価の関係性」についてのグラフです。他のデータもありますのでご興味ある方はこちら​​をご覧ください。

 

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/211006_kenkokeiei_gaiyo.pdf

 

【要約】

・過去10年間の株価の推移(2011年9月〜2021年9月)

・健康経営銘柄2021がTOPIX(東証株価指数)を上回るという結果が出ています。これも健康経営と企業業績には一定の相関があるとみることができます。

 

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html

 

 

 

次は、企業による健康への介入によって、健康度が上がるのかどうかを調べたデータです。

このデータは健康保険組合をはじめとする医療保険者に対し

「腹囲」→ 内臓脂肪型肥満を簡易測定する際に有用

「体重」

「血糖(Hb1c)」→ 過去2ヶ月間の血糖値平均

「血圧(収縮期)」→ 心臓や血管への負担 

「中性脂肪」→ 血液内の脂肪量、血管の酸化度、脳血管イベントと関わりがある

を調べたものになります。

結果、積極的支援参加者(下に説明有り)は不参加者に比べ、ほぼ全ての検査値で改善効果が維持できています。

 

このデータは、19万人の2008年〜2013年度の経年分析結果から導き出したもの。

 

 

積極的支援とは、対象者が自らの健康状態を自覚し、生活習慣の改善のための自主的な取組を継続的に行うことができるようになることを目的として、医師、保健師又は管理栄養士の面接による生活習慣の改善に係る行動計画の策定及び栄養又は運動、禁煙等生活習慣の改善に関する保健指導を行うとともに、対象者とのコミュニケーションを十分に図ることその他の様々な方法により、対象者が主体的に生活習慣の改善への取組に参加するよう適切な働きかけを相当な期間継続して行う保健指導をいう。(厚生労働省資料より)

 

左図は厚生労働省による「特定保健指導」積極的支援の内容についての説明。

 

 

健康経営に取り組むと「なぜ業績が上がるのか」

 

業績が上がるフロー

 

 

保健指導を受けることで、いくつかの健康診断項目(フィジカルな部分)が改善する事が上記データでみることができます。下記はメンタルヘルスと利益率の関係を示したデータです。

 

従業員100人以上の451企業のメンタルヘルス休職者と企業の業績の低下を検証。

メンタルヘルス休職者が増えるに連れて、企業の業績が低下している。

 

<メンタルヘルス休職者比率と利益率との関係>

 

 

(出所)RIETI Discussion Paper Series 14-J-021 企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績 -企業パネルデータを用いた検証- 黒田 祥子 早稲田大学 山本 勲 慶應義塾大学

 

 

<アブセンティーイズム(欠勤による損失)と生活習慣指標との関係>

結果:既往歴がある人について、有意差がみられる。

 

 

<アブセンティーイズム(欠勤による損失)と心理的指標との関係>

結果:睡眠休養と運動習慣との相関がある

 

 

<アブセンティーイズム(欠勤による損失)と心理的指標との関係>

結果:これは全項目で高い相関がある

 

<プレゼンティーイズム(生産性低下損失)と身体的指標との関係>

結果:相関は低い

 

 

<プレゼンティーイズム(生産性低下損失)と生活習慣指標との関係>

結果:アルコール摂取と睡眠休養で特に相関が強い

 

 

<プレゼンティーイズム(生産性低下損失)と心理的指標との関係>

結果:全ての項目で強い相関がある

 

 

なお、本分析結果は、平成 27 年度健康寿命延伸産業創出推進事業における健康経営評価 指標の策定・活用コンソーシアム(代表団体:特定非営利活動法人健康経営研究会、参加 団体:東京大学、産業医科大学)の東大 WG により得られた調査結果をもとに記載したも のである。単年度でのデータ分析結果であるため、今後のデータ収集による母数の拡大と 経年的な変化等を取り入れたデータの精緻化等の精査が必要であるが、参考のため付録と して示すものである。

 

睡眠や休息が少なくなると、欠勤や生産性低下に繋がるという相関がこのデータでは示されています。また、強い相関を示すものとして、心理的に自分自身が「健康である」と思える事が欠勤や生産性低下に繋がらないという事が分かります。

そして、欠勤や生産性低下は、生活の満足度や仕事の満足度、ストレスといったものとも強い関係があるという結果となっています。

 

次回、第3回目は、健康経営の期待と課題(健康管理室の有用性)について記述予定です。

 

記述者、島脇の情報一覧はこちらより

https://lit.link/shimachannel

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