40代からの身体づくり「筋トレ・プロテイン」が当てはまらないケースとは

40代からの身体づくり「筋トレ・プロテイン」が当てはまらないケースとは

TOMOYUKI SHIMAWAKI(島脇 伴行) トレーナー/ヘルスコーチ|BODY DIRECTOR

参考文献:査読済み臨床試験・系統的レビュー

この記事でわかること
  • 40代の身体で起きているホルモン・回復力の変化を、研究データをもとに理解できる
  • 筋トレやプロテインが「合わないケース」にはどんな特徴があるのか、具体的に把握できる

40代になってから、なんとなく身体の調子が以前と違う。そう感じる方は少なくありません。週に何度もジムに通い、プロテインも欠かさず飲んでいる。それでも、疲れが抜けない、関節がどこか重い、以前のような活力が湧いてこない。多くの場合、原因は「努力不足」ではありません。むしろ、努力の方向性そのものが、40代の身体に合わなくなっている可能性があります。この記事では、40代の身体に何が起きているのかを研究データから整理し、そのうえで一般的な「筋トレ・プロテイン」というアプローチが、なぜ人によっては逆効果になりうるのかを考えていきます。

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<よくあるケース①> 頑張っているのに、なぜか結果が出ない

40代の男性で、こういった方を見かけます。週3回のジム通いを続け、トレーニング後には欠かさずホエイプロテインを飲む。タンパク質をとにかく意識して、コンビニではプロテインバーやサラダチキンを購入する。傍から見れば、ストイックな人だな、と思える取り組み方です。

でも、周りの方も、なんとなく「おかしいな」と気づいているんですね。「凄いけれど、なんだか他にも健康づくりの方法はあるんじゃないか」と。

本人も、「以前ほど結果が出ない」「むしろ疲労感が強くなった」とおっしゃることが多いのです。肩や腰の違和感、慢性的な気だるさ、寝ても抜けない疲れ。「年齢のせいでしょうか」と。

40代の身体で、静かに起きている変化

40代の身体は、外見の変化以上に、内側で大きく動いています。なかでも見過ごされがちなのが、ホルモン環境の変化です。

テストステロンと「やる気」の関係

男性ホルモンの代表であるテストステロンは、加齢とともに緩やかに低下していきます。American Journal of Psychiatry に掲載された報告によれば、テストステロン値は40代から低下が始まり、10年ごとに約100 ng/dl減少するとされています。さらに、加齢に伴ってSHBG(性ホルモン結合グロブリン)が増えるため、身体で実際に使える「遊離テストステロン」の減少は、総量の減少以上に顕著になります。

Research — PMC, 2025

2025年にPMCで公開された系統的レビューでは、加齢に伴うテストステロンの低下が、抑うつ症状・意欲の減退・認知機能の低下・生活の質の低下と関連することが、複数の研究で示されていると報告されています。

ほんとに、と思われるかもしれません。けれど、現場で40代以降の方とお話ししていると、「以前ほど物事に踏み出せない」「気力が湧いてこない」という感覚を口にされる方は、確かに多いのです。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、これはあくまで「関連が示されている」段階であり、テストステロン低下が直接やる気を奪うという因果関係が確立されたわけではないということです。個人差も大きく、すべての40代男性に同じことが起きるわけではありません。それでも、「頑張りたいのに気力が続かない」という感覚の背景に、ホルモンの変化が関わっている可能性は、念頭に置いておく価値があります。

回復力という、見えにくい変化

もう一つの変化は、回復力です。成長ホルモンの分泌量も加齢とともに減少し、筋肉・腱・関節の修復にかかる時間は確実に長くなります。20代であれば一晩で抜けていた疲労が、40代では2日、3日と尾を引く。これは怠惰の問題ではなく、生理的な変化です。

回復力の低下は、トレーニングの「同じ強度・同じ頻度」という前提を崩します。20代の感覚で組んだメニューを40代でこなし続けると、回復が追いつかないまま次のトレーニングが重なっていく。これが、後述する自律神経への負担の入り口になります。

「合わないケース」とは何か

40代になっても、筋トレもプロテインも、適切に取り入れれば有効な手段です。ただし、「合わないケース」が確かに存在します。ここでは、そのなかでも特に現場でよく見る2つを取り上げます。

高負荷トレーニングが自律神経に与える影響

筋肥大を最優先にした高負荷のレジスタンストレーニング。これは、十分な回復が伴っていれば効果的なアプローチです。しかし、回復が追いつかない状態で続けた場合、身体には別の反応が起こり始めます。

Research — Georgian Medical News, 2017 / Frontiers in Network Physiology, 2021

オーバートレーニング状態にあるアスリートを対象にした研究では、心拍変動(HRV)の低下、迷走神経活動の低下、そして交感神経優位の心臓自律神経制御が確認されています。

また、過剰なトレーニング負荷が骨格筋・骨・関節への損傷をもたらすとともに、神経内分泌系の機能不全を引き起こすメカニズムも示されています。

交感神経が優位な状態が慢性化するとは、身体が「常に戦闘モード」に置かれているということです。寝ても疲れが抜けない、心拍が落ち着かない、些細なことでイライラする、睡眠が浅い。こうした症状が重なるとき、トレーニングそのものが回復を妨げている可能性があります。

注意していただきたいのは、これらの研究の多くは競技アスリートを対象にしたものであり、一般の40代に直接当てはめることはできない、という点です。けれど、回復力が低下した40代の身体に対して、休養の不十分なまま高負荷トレーニングを続けることが、似たような反応を引き起こしうるということは、現場で繰り返し見てきた事実でもあります。

「もっと追い込まなければ」という意識が、結果的に身体を消耗させているケース。これは、決して珍しいことではありません。

プロテイン過剰摂取と胃腸への負担

「プロテインは多く摂るほど良い」という認識は、すでに研究によって否定されています。身体が一度に吸収・活用できるタンパク質量には限界があり、余ったタンパク質は最終的に腸内で処理されることになります。

Research — Current Protein & Peptide Science, 2017

タンパク質と腸内細菌叢に関するレビューでは、未消化タンパク質が大腸に到達すると、タンパク質を発酵させる菌や病原性菌が増殖し、アンモニア・アミン類・硫化水素などの代謝物が産生されると報告されています。これらの代謝物は、腸のバリア機能や免疫系に影響を与える可能性があるとされています。

まさか、身体のために飲んでいるはずのプロテインが胃腸に負担をかけることがあるのか、と思われるかもしれません。けれど、現場でお腹の張りや便通の乱れを訴える方の食事内容をうかがうと、プロテインの摂取量が体格や活動量に対して明らかに過剰になっているケースがあります。

ここでも、エビデンスの限界には触れておく必要があります。プロテイン過剰摂取と腸内環境に関する研究は、マウスモデルや短期間の臨床試験が中心であり、健康な成人における長期的な影響は、まだ研究が積み上がっている段階です。現時点で言えるのは、「自分の消化能力や活動量を超える摂取は、胃腸に負担をかける可能性がある」という、慎重な表現にとどめるべき範囲です。

それでも、「身体に良いから」と疑わず摂り続けるのではなく、自分の身体の反応を観察する視点を持つことは、40代以降ではより重要になると感じています。

<よくあるケース②> 手段が目的になってしまうとき

もう一つ、現場でよく見るパターンがあります。「トレーニングをすること」自体が目的になってしまっているケースです。

最初は、肩こりを治したい、姿勢を改善したい、健康診断の数値を良くしたい、といった明確な目的があったはずです。ところが、ジム通いが習慣化していく過程で、いつの間にか「週3回行くこと」「決めたメニューをこなすこと」が達成すべきゴールになっていく。

もちろん、ここまで習慣化できるということは、それ自体とても素晴らしいことです。運動は続けられない人の方が圧倒的に多いなかで、何年も続けられるというのは、もはや一つの特技と言ってもよいと、私は思っています。

ただ、話を戻します。

このようなルーティン状態に入ると、膝の違和感、朝のだるさ、寝つきの悪さといった、本来であれば「今日は強度を落とそう」「アプローチを変えよう」と判断すべきサインが、「今日もやり切った」という達成感によって上書きされてしまうことがあります。

そして、こうした方向のズレを指摘できる人は、一人で運動している方はもちろん、プロとして活動しているトレーナーであっても、決して多くありません。多くの現場では、「いつものメニューの繰り返し」「トレーニング強度で変化をつける」という指導が中心になります。けれど、本当に必要なのは、「今のあなたの身体に、このトレーニングは合っているのか」という視点です。

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注意点・エビデンスの限界について

本記事で紹介した研究は、加齢に伴うホルモン変化や過剰トレーニング、タンパク質摂取と腸内環境に関するものですが、対象集団や研究デザインに限界があります。テストステロン低下と気分・意欲の関係は「関連」が示されている段階であり、因果関係が確立されたわけではありません。また、オーバートレーニングに関する研究は競技アスリートが中心であり、プロテインの腸への影響に関する研究はマウスモデルや短期介入が中心です。一般の40代への外挿には慎重さが求められます。記事の内容は健康相談・コンディショニングの一般的な考え方を示すものであり、特定の症状や疾患に対する診断・治療を意図したものではありません。気になる症状がある場合は、医師にご相談ください。

まとめ 40代の身体づくりに必要な視点

40代の身体は、20〜30代とは違う場所にいます。テストステロンをはじめとするホルモンの変化、回復力の低下、柔軟性の低下。これらは避けられない生理的なプロセスであり、それ自体は問題ではありません。問題なのは、こうした変化を無視して、以前と同じアプローチを続けてしまうことです。

筋トレが悪いわけでも、プロテインが悪いわけでもありません。ただ、自分の身体の現在地を正確に知り、「何のためにそれをやっているのか」を問い直すこと。これが、40代以降の身体づくりにおいて、特に大切になる視点だと感じています。

手段を目的にしないこと。身体のサインを無視しないこと。年齢と現状に合ったアプローチを選ぶこと。この3つが揃ったとき、トレーニングは初めて「自分のため」の手段に戻ります。

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References
  1. Sternbach H. Age-Associated Testosterone Decline in Men: Clinical Issues for Psychiatry. American Journal of Psychiatry. 1998;155(10):1310–1318.
  2. Psychiatric and Cognitive Effects of Testosterone Therapy in Adult Men: A Systematic Review of Clinical Evidence and Mechanistic Insights. PMC. 2025.
  3. Cadegiani FA, Kater CE, et al. Overtraining Syndrome as a Complex Systems Phenomenon. Frontiers in Network Physiology. 2021.
  4. Kajaia T, et al. The Effects of Non-Functional Overreaching and Overtraining on Autonomic Nervous System Function in Highly Trained Athletes. Georgian Medical News. 2017.
  5. Yang Y, et al. Contributions of the Interaction Between Dietary Protein and Gut Microbiota to Intestinal Health. Current Protein & Peptide Science. 2017.
Author
島脇 伴行(しまわき ともゆき)
BODY DIRECTOR 代表 / アメリカスポーツ医学会認定・運動生理学士 / ヘルスコーチ

1977年生まれ。2002年パーソナルトレーナーとして開業。2005年、日本で初めてとなる完全個室の表参道プライベートジム「BODY DIRECTOR」を設立。

クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中心。筋トレだけでは健康効果に限界があるとの考えから、生化学を基にした栄養指導、自律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供。

法人クライアント:ポニーキャニオン(IRORI Records)、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、トイズファクトリー、トランジットジェネラルオフィス、ラストラムミュージックほか。

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