「メンタル不調は医者任せ」の終焉──エビデンスが示す”身体介入”の有効性

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島脇伴行(Tomoyuki Shimawaki)
・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
株式会社フィットネス&コミュニティ代表
プライベートジムBODY DIRECTOR代表
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はじめに:なぜ「治療→復職→再発」ループが止まらないのか

ストレスチェックで高ストレス者を発見し、産業医面談を経て精神科へ。 「会社としてやるべきことはやった」この認識で止まっていませんか。

残念ながら、このアプローチだけでは根本解決に至らないことが、複数の疫学研究で明らかになっています。

再発率の現実:復職後3年以内に85%が再休職

日本のIT企業で行われた8.5年間の追跡調査(n=540)では、復職後に約半数(49.3%)の社員が再休職を経験しました。さらに注目すべきは、再休職の85.2%が復職後3年以内に集中していたという事実です※1

別の日本の多施設共同研究(GLADS)でも、うつ病エピソードからの回復後、5年以内に42%が完全な再発を経験したことが報告されています※2。閾値下症状(診断基準を完全には満たさないが症状がある状態)まで含めると、その割合は65%に達します。

これらのデータが示すのは、「症状が治まった=問題解決」ではないという厳然たる事実です。

投薬治療の限界:回路は書き換えられない

精神科での投薬治療は、急性期症状の抑制には有効です。 しかし、回復時に残存症状がある場合、その後の再発リスクが有意に高まることが示されています※2

つまり、薬で症状を抑えても、ストレスに対する脆弱性そのものは変わらないのです。同じ環境・同じ刺激にさらされれば、同じ反応が起きる。 これが「治療→復職→再発」ループの構造的原因です。

身体介入のエビデンス:運動療法の効果

ここで注目すべきは、運動療法(Exercise Therapy)のエビデンスです。

2023年に発表されたメタ分析(41研究、n=2,264)では、運動介入群は対照群と比較して大きな効果量(SMD=-0.946)を示しました。これはNNT(治療必要数)=2に相当し、2人に運動介入を行えば1人が有意な改善を示す計算になります※3

さらに、低バイアスリスクの研究に限定しても中程度の効果(SMD=-0.666、NNT=2.8)が維持されており、研究の質を考慮しても効果は強固であることが確認されています※3

特に効果が高かったのは以下の条件です:

姿勢・呼吸・メンタルの三角関係

運動の効果は「気分転換」だけでは説明できません。呼吸・姿勢・心理状態の間には、生理学的な相互作用が存在することが示されています。

2024年に発表された研究では、腹式呼吸ができない被験者は不安スコアが高く、姿勢安定性も低いことが明らかになりました※4

この研究で特に興味深いのは、男性において腹式呼吸パターンと安定性・不安の間に有意な関連が見られた点です。腹式呼吸ができる群では姿勢の揺れが減少し、不安スコアも低下していました。

これは「心」の問題を「心」だけで扱う限界を示唆しています。身体の状態が脳の反応パターンを規定し、それが心理状態として表出するこの生理学的メカニズムを理解することが重要です。

企業ができる「身体介入」の仕組み化

では、企業として何ができるのか。 以下の3つのレイヤーで介入を検討すべきです。

1. 運動療法の導入

  • 週2-3回、中強度の有酸素運動を推奨(ウォーキング、軽いジョギングなど)
  • ・監督下・グループ形式での実施が効果的※3
  • ・筋力トレーニングやヨガも有効な選択肢

2. 姿勢・呼吸の再教育

  • ・デスクワーク中心の社員は特に胸郭の可動性が低下している
  • ・腹式呼吸のトレーニングは即効性があり、コストもかからない
  • ・ただし、数分の指導では習得困難 継続的なプログラムが必要※4

3. 復職後3年間の重点フォローアップ

  • ・再休職リスクは復職後3年間に集中している※1
  • ・この期間中の身体コンディショニングサポートが再発予防の鍵

結論:対症療法から予防的介入へ

精神科医療との連携は今後も必要です。 しかし、それだけでは不十分であることを、データは明確に示しています。

「不調になったら医者へ」から「不調にならない身体をつくる」へのパラダイムシフトこそが、真の健康経営への第一歩です。

運動療法のエビデンスは、もはや「気休め」や「おまけ」ではありません。 NNT=2という数字は、多くの薬物療法と同等かそれ以上の効果を示しています。

「心」の問題を「心」だけで解決しようとするのは、 エンジンの故障を運転手の気合いで直そうとするようなものです。

まずはボンネットを開け、回路を繋ぎ直し、オイルを差す。 それが、科学的根拠に基づいた健康経営のあり方です。

参考文献

  • 1. Endo M, et al. Recurrence of Sickness Absence Due to Depression after Returning to Work at a Japanese IT Company. Industrial Health. 2013;51(2):165-171.
  • 2. Kanai T, et al. Time to recurrence after recovery from major depressive episodes and its predictors. Psychological Medicine. 2003;33(5):839-845.
  • 3. Heissel A, et al. Exercise as medicine for depressive symptoms? A systematic review and meta-analysis with meta-regression. British Journal of Sports Medicine. 2023;57(16):1049-1057.
  • 4. Tassani S, et al. Breathing, postural stability, and psychological health: a study to explore triangular links. Frontiers in Bioengineering and Biotechnology.

プロフィール

島脇伴行(しまわきともゆき)
BODY DIRECTOR代表
アメリカスポーツ医学会認定/運動生理学士
ヘルスコーチ

日本での取り組み実績

2007年よりライブツアーの帯同やアーティストのトレーニングと栄養管理を行なってきました。

  • ・アーティストの年間トレーニング計画
  • ・ケータリングの食事メニューの監修
  • ・ツアー帯同時の整体
  • ・ツアー帯同中、アーティストへのコーチング など

スタジアムツアー、ドームツアー、アリーナツアー、ホールツアー、各種Fesなど600公演以上をサポート

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経歴

1977年⽣まれ
(株)フィットネス&コミュニティ代表
パーソナルトレーナーとして2002年開業。近年はその⼀環としてコーチングを実施。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中⼼。
完全個室のプライベート空間でのサービス実施が密度の⾼いコーチングに繋がると考え、2005年に⽇本で初めてとなる個室ジムを設⽴。
筋トレだけでは健康効果に限界があると考えたことで、⽣化学を基にした栄養指導、また、⾃律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供している。心理学学士号取得済み。

法⼈クライアント

  • ・株式会社ポニーキャニオン(IRORI Records)
  • ・株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
  • ・株式会社トイズファクトリー
  • ・株式会社トランジットジェネラルオフィス
  • ・株式会社ラストラムミュージック
  • ・株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント

などと契約中
個⼈顧客は記載を控えます。

運営ジム

東京、表参道 / BODY DIRECTOR
https://bodydirector.com/

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