ヘルスコーディネーター導入で創造的組織の向上と持続性を高める

前回の記事では、ヘルスコーディネーターの機能とアーティスト側のメリットを紹介しました。今回は視点を引き上げ、レーベルや所属事務所の健康を軸とした組織の土台をどのように設計すべきかのヒントをCEOの立場から考えます。

音楽業界の未来を左右するのは、A&Rの目利きやマーケティングだけではありません。アーティストとスタッフの健康をどのようにマネジメントするのかが、ツアーの成功率、ブランド価値、投資家からの評価に直結しています。創造性は健康という土台があってこそ計画的に働くものです。健康を制度として担保する仕組み作りを行いましょう。

Author Profile
島脇伴行(Tomoyuki Shimawaki)
・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
株式会社フィットネス&コミュニティ代表
プライベートジムBODY DIRECTOR代表
YouTubeチャンネル

なぜ「いま」導入すべきか

産業構造の変化

この10年で音楽産業は劇的に変化しました。リリースサイクルの短縮、SNSの常時稼働、長期プロモーションの常態化。これらはアーティストの稼働負荷を飛躍的に高め、燃え尽きや長期離脱が現実のリスクとなっています。創造性を支えるはずの環境が、むしろアーティストの継続性を阻害しているのが現状です。

ブランドの保全とリスクマネジメント

ツアー中止リスクは単なる興行の問題ではありません。1回の中止で数千万円規模の直接損失が発生し、払い戻し対応、輸送費、人件費といった追加コストも膨らみます。さらに深刻なのは、炎上や健康トラブルによるブランド毀損です。ファンの信頼が揺らげば、アルバムやグッズの売上だけでなく、将来のチケット販売にも影響します。保険料の上昇も固定費を押し上げ、経営の重荷となります。

投資家・規制要請

近年、投資家や社会からは人的資本への対応開示への対応が強く求められています。ESG評価においても、アーティストやスタッフの健康・安全への配慮は重要な審査ポイントです。これはもはや「福利厚生」の問題ではなく、経営戦略そのものに直結するテーマです。健康リスクを組織的に管理できるかどうかは、投資家からの信頼や資金調達力にも大きな影響を与えます。

「健康課題は福利厚生の問題ではなく、事業継続性と投資家評価の問題である」

ヘルスコーディネーターのロール定義

ヘルスコーディネーターは、アーティストの健康を制度的に担保し、商業計画を安定化させる役割を担います。

ミッションは、アーティストとコアスタッフの健康・安全・パフォーマンスを最大化し、ツアーや制作の計画を確実に遂行できる状態を整えることです。

ヘルスコーディネーターの成果は明確です。ツアー中止率の低減、1アーティストの稼働継続期間の延伸、保険料や炎上リスクの抑制。いずれもCEOが最も気にかける数字に直結します。

権限としては、健康面におけるGo/No-Goの勧告権、ツアースケジュール調整の要求権を持ちます。ただし医師のように診断や治療を行うわけではなく、医療専門家と連携しながらセーフティラインを提示する経営レイヤーとしての役割を持ちます。

さらに重要なのは、ヘルスコーディネーターが危険水域にあるアーティストや部署に対して、ダイレクトにアプローチする権限を持つ点です。単なる経営会議での助言にとどまらず、現場で黄色信号が出た場合には、直接アーティスト本人や担当部署に働きかけ、スケジュールの調整や回復プロトコルの開始を指示できます。

つまりヘルスコーディネーターは、CEOに助言する「戦略的アドバイザー」であると同時に、危機が迫った際には現場に介入する「セーフティガード」でもあります。

組織設計:CEO直結の配置

以下は、ヘルスコーディネーターを配置した組織図の一例です。

組織図は重要です。これがヘルスコーディネーターが機能するかどうかのポイントと言っても過言ではありません。基本原則はシンプルで、CEO直下に配置し、A&R、制作、PR、ツアー部門と横断的に連携します。重要なのは「指揮命令」ではなく「助言・監督」。外部取締役やアドバイザリーのように、CEOや各部門の判断に対してセーフティラインを提示する存在です。

外部ネットワークの活用もポイントです。医師、臨床(公認)心理士、理学療法士、ボーカルコーチ、栄養士などをプロジェクトごとに起用し、固定人件費を抑制しつつ最適なサポートを提供します。これは大規模レーベルだけでなく、中小規模の事務所にとっても導入しやすい仕組みです。

ROI視点:数字で捉える導入効果

<KPIの設定>

  • ・ツアー中止率
  • ・健康起因による稼働不可日数
  • ・保険料の推移
  • ・復帰までの平均日数

これらを定量的に管理することで、導入効果を数字で示すことができます。

 

<簡易計算>

中止1公演あたりの損失は、直接コスト5,000万円+周辺コスト1,500万円=合計6,500万円 に達します。
仮に年間10ツアーを実施し、各ツアー平均10公演とすると、年間の総公演数は 約100公演 となります。

このときヘルスコーディネーター導入によって中止率を2%改善できれば、
100公演 × 2% = 約2公演分 の中止回避につながり、
2公演 × 6,500万円 = 1億3,000万円 の効果が見込めます。

 

「ヘルスコーディネーターはコストではなく、収益確実性を担保する投資である」

まとめ

ヘルスコーディネーターは「福利厚生」ではなく、収益確実性を作る役割です。制度として導入することで、レーベルや事務所は持続可能性競争優位を同時に獲得できます。

この考え方を組織に根付かせることが、エンターテインメント業界の未来を豊かにするでしょう。

プロフィール

島脇伴行(しまわきともゆき)
BODY DIRECTOR代表
アメリカスポーツ医学会認定/運動生理学士
ヘルスコーチ

日本での取り組み実績

2007年よりライブツアーの帯同やアーティストのトレーニングと栄養管理を行なってきました。

  • ・アーティストの年間トレーニング計画
  • ・ケータリングの食事メニューの監修
  • ・ツアー帯同時の整体
  • ・ツアー帯同中、アーティストへのコーチング など

スタジアムツアー、ドームツアー、アリーナツアー、ホールツアー、各種Fesなど600公演以上をサポート

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経歴

1977年⽣まれ
(株)フィットネス&コミュニティ代表
パーソナルトレーナーとして2002年開業。近年はその⼀環としてコーチングを実施。
クライアントはエンターテイメント業界のアーティストや企業経営者が中⼼。
完全個室のプライベート空間でのサービス実施が密度の⾼いコーチングに繋がると考え、2005年に⽇本で初めてとなる個室ジムを設⽴。
筋トレだけでは健康効果に限界があると考えたことで、⽣化学を基にした栄養指導、また、⾃律神経系の調整に有益な整体をパーソナルセッションとして提供している

法⼈クライアント

  • ・株式会社ポニーキャニオン(IRORI Records)
  • ・株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
  • ・株式会社トイズファクトリー
  • ・株式会社トランジットジェネラルオフィス
  • ・株式会社ラストラムミュージック

などと契約中
個⼈顧客は記載を控えます。

運営ジム

東京、表参道 / BODY DIRECTOR
https://bodydirector.com/

英語・韓国語記事

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韓国語記事
헬스 디렉터 도입으로 창의적 조직의 향상과 지속성 강화

英語記事
Enhancing Creative Organizations and Sustainability Through the Introduction of a Health Director

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