パーソナルトレーニングよりも大切なコーチングの価値

パーソナルトレーニングと聞くと、一般的に「筋トレの正しいフォームを教えてくれる人」「体を鍛えるための技術指導をしてくれる人」というイメージをお持ちではないでしょうか。確かに筋トレ指導はパーソナルトレーニングで重要な要素ですが、持続的な変化をもたらすにはそれだけでは不十分だと私は考えています。

今回は、単なる技術指導を超えた「コーチング型パーソナルトレーニング」の価値と、ハイパフォーマーがなぜ指導者ではなく伴走者を必要とするのかについて、心理学と行動科学の観点から掘り下げます。

Author Profile
島脇伴行(Tomoyuki Shimawaki)
・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
株式会社フィットネス&コミュニティ代表
プライベートジムBODY DIRECTOR代表
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ティーチングとコーチングの本質的な違い

パーソナルトレーニングのアプローチは、大きく分けて二つの手法が存在します。
一つは「ティーチング(教える)」、もう一つは「コーチング」です。

ティーチング型トレーナーは、運動の正しいフォームや効果的なメソッドを教え、外側からの指示によってクライアントを導きます。例えば「背中をもっと伸ばして」「腰を落として」といった具体的な指示を中心に、トレーナーの知識をクライアントに伝達するスタイルです。

対照的に、コーチング型トレーナーは、クライアント自身が持つ潜在能力や内的動機を引き出し、自律的な行動変容を促します。「この運動によって何を実現したいですか?」「どんな感覚を大切にしたいですか?」といった問いかけを通じて、クライアント自身の内側から湧き上がる動機づけを活性化します。
*実際にはこのようなダイレクトの質問をする機会は限られます(笑)

言い換えれば、ティーチングが「How(どのように)」を教えるのに対し、コーチングは「Why(なぜ)」に焦点を当てます。持続的な変化には、「正しい方法を知っている」だけでなく、「自分がなぜそれを行うのか」という明確な理由と内的な動機が不可欠なのです。
*私のスタイルは、即効性を重視している解決重視のアプローチを行います。「なぜ」と問いながらも「How To」で即座に活かせる事も伝えます。

なぜハイパフォーマーほどコーチングを必要とするのか

分かりやすく説明するために、このような職業の方を例にします。プロスポーツ選手、経営者、アーティストといったハイパフォーマーは、すでに高いレベルのスキルと知識を持ち合わせています。彼らが更なる高みを目指す上で障壁となるのは、技術的な問題よりも、むしろ心理的・精神的な側面であることが多いと感じます。

例えば、世界的なテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチは、技術面での指導者に加えて、メンタル面をサポートするコーチを持つことで、プレッシャーの中でも最高のパフォーマンスを発揮できる精神状態を維持しています。

同様に、多くの成功したCEOは、ビジネスコーチとの定期的なセッションを通じて、孤独な決断の過程で自分自身と向き合い、明確なビジョンを保ち続ける力を育んでいます。アメリカが中心の話ですけどね。日本ではコーチングを受けたことが無い人の方が圧倒的に多いです。

ハイパフォーマーが直面する独特の課題には、以下のようなものがあります

孤独との闘い
トップに立つほど、同じ視点や経験を共有できる人が少なくなる傾向に。

完璧主義の罠
高い基準が時に自分自身を追い詰める原因となります。それがプラスに回る事もあります。

継続的な自己革新
常に進化し続けるプレッシャーがあります。もちろんそれで自己成長する事もあります。

結果と過程のバランス
短期的な結果と長期的な成長のジレンマに直面します。売れる作品を作るのか、やりたい作品を作るのか、などもここに含まれます。

これらの課題に対して、筋トレ指導では不十分です。内側から湧き上がる情熱と行う目的を維持し、精神的な強靭さを育むためには、伴走者としてのコーチが重要な役割を担います。

内的動機づけがもたらす持続的な行動変容の科学

行動科学の研究によれば、持続的な行動変容は外的な報酬や罰則(外発的動機)よりも、自律性、有能感、関係性といった内的な欲求(内発的動機)によって促進されます。これは心理学者のリチャード・ライアンとエドワード・デシによる「自己決定理論」の中核をなす考え方です。

内的に動機づけられた行動は

長続きする
外部からの監視がなくても継続します

質が高い
より創造的で、深い思考を伴います

満足度が高い
活動自体から喜びや充実感が得られます

例えば、「周りに言われたから」筋トレをする人と、「自分の健康や目標のために」筋トレをする人では、同じ行動でも持続性や質に大きな差が生じます。前者は監視がなくなれば行動も止まりやすいのに対し、後者は自律的に行動を継続できるのです。ちなみに、私たちと契約する方は、自律的に運動ができない方が大半です。自律的には継続して取り組むことができないが、そこをサポートする過程で筋トレ以外の健康意識も高まります。

実際の研究でも、内的動機づけに基づくフィットネスプログラムの参加者は、外的な動機(例:見た目を良くするため、他者の評価のため)に基づく参加者と比較して、1年後の継続率が約3倍高かったという結果が報告されています。

コーチング型アプローチでは、クライアント自身が「なぜこの行動が自分にとって意味があるのか」を探求し、内的な動機づけを高める対話を重視します。これにより、トレーナーがいない環境でも自律的に健康行動を継続できる力が育まれます。パーソナルトレーニングを実施している以外の時間はセルフコントロールが求められるからですね。

世界のトップパフォーマーが実践する「内側からの変革」

世界のトップアスリートやビジネスリーダーの多くは、単なる技術指導を超えた「内側からの変革」をもたらすコーチングを重視しています。

バスケットボールの伝説マイケル・ジョーダンは、ティム・グローバーというパーソナルトレーナーと長年働いてきましたが、グローバーの真の貢献は技術指導だけでなく、ジョーダンの内的な火を燃やし続け、常に自己超越を追求する心理的フレームワークを提供したことにありました。

同様に、テスラとスペースXのCEOイーロン・マスクは、内なるビジョンと使命感が、数々の挫折や批判を乗り越える原動力になっていると語っています。外側からの評価ではなく、内側から湧き上がる強い目的意識が、困難な道のりを継続させる力となるのです。実際に部屋の壁に目標を書いたものを掲げている人は、常にその目標をイメージして行動ができるようになり、結果として目標達成をする確率が劇的に上がります。

日本でも、ソフトバンクの孫正義氏は、25年以上前に「300年ビジョン」という内なる指針を掲げ、短期的な評価に左右されない長期的な行動原理を自らに課しています。この内的な指針が、数々の困難な局面で揺るぎない決断を支えてきました。孫氏自身が「長期ビジョンがあるから、短期の波に惑わされない」と語っています。

これらのハイパフォーマーに共通するのは、外側からの評価や短期的な成果だけでなく、内側から湧き上がる目的意識を高め、維持する行動です。そして、優れたコーチングはそうした内なる炎を見出し、育むことを行います。

BODY DIRECTORのコーチング哲学:伴走型アプローチ

私は、単なる筋力トレーニングの指導を超えた「伴走型コーチング」をパーソナルトレーニングの中心に据えています。私たちのアプローチには以下のような特徴があります

1. 傾聴と問いかけを重視

セッションでは「教える」と同時に「聴く」ことを大切にします。クライアントの言葉の奥にある真のニーズや価値観を理解し、それに寄り添った問いかけによって、自己認識と内的動機を高めていきます。 例えば、「なぜ私のセッションを受けに来られたのですか?」「目標を実現するために、普段の生活の〇〇を教えてください」といった深い問いかけを通じて、表面的な目標(体重を減らすなど)の背後にある本質的な価値(家族との時間を大切にしたい、自分の可能性を最大限に発揮したいなど)に気づくきっかけを提供します。

私の場合はコーチングだけの対応をされると内的になりすぎる傾向があるので、実際コーチをする際はティーチング、コーチング、世間話のバランスを考えます。

2. 自律性を尊重したプログラム設計

トレーニングプログラムは、クライアントと共に創り上げるプロセスを重視します。「これをやるべき」と一方的に提案するのではなく、クライアントの生活スタイル、価値観、好みを尊重し、自律的に継続できるプログラムを共同設計します。

これにより、「やらされている感」ではなく「自分で選んだ」という自律感が生まれ、長期的な行動変容につながります。

3. 「なぜ」と「どのように」の橋渡し

高い理想や目標(「なぜ」)と、日々の具体的な行動(「どのように」)をつなぐ橋渡しを支援します。大きなビジョンを小さな一歩に分解し、日々の生活に無理なく組み込める形で提案します。

例えば、「健康的な体を取り戻したい」という目標を、「朝の10分間の散歩」「週2回の筋トレ」「夕食後時の主食を低糖質麺に変換」といった具体的で実行可能な行動に落とし込み、それらを習慣化するための心理的・環境的サポートを提供します。

4. 成功体験の積み重ねによる自己効力感の向上

小さな成功体験を意図的に設計し、「自分にはできる」という自己効力感を高めていきます。これが次の挑戦への原動力となり、ポジティブなスパイラルを生み出します。これを筋トレだけで実施してしまうと、負荷を上げる、筋肉を無理につける、という方向に流れやすく、結果として、怪我や疲労や目的から離れていくという悪結果をもたらすことになりかねません。

無料相談のご案内

このように、私の主催するBODY DIRECTORのパーソナルトレーニングは、単に「正しい筋トレ方法を教える場」ではなく、クライアント自身の内的変革を支援し、真の意味での持続的な健康行動を実現するための「伴走の場」として2005年から営業を続けています。

目標達成を自身の健康から導きたいと考えている方は、無料カウンセリングにご連絡ください。
*カウンセリング担当は島脇を選択 詳細も記載していただけるとより充実したカウンセリングを実施できます。

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