多くの方が挑戦する食事制限によるダイエット。短期間で体重を落とせる反面、筋肉量の減少や代謝の低下といったリスクが存在します。また、「食べる量を減らしただけなのに、なぜか以前より太りやすくなった」という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。

・アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士
・株式会社フィットネス&コミュニティ代表
・プライベートジムBODY DIRECTOR代表
・YouTubeチャンネル
目次
Toggle食事制限だけのダイエットが引き起こす負のスパイラル
「食べる量を減らせば痩せる」というシンプルな発想で始める食事制限。確かに短期的には体重が減少しますが、減っているのは脂肪だけじゃありません。
厳しい食事制限を行うと、エネルギー消費の大きい筋肉組織も減少し、そうなると基礎代謝が低下します。基礎代謝は私たちが何もしていなくても消費されるエネルギー量であり、全体の消費カロリーの約60-70%を占めています。
この基礎代謝の低下により、同じ量を食べても以前より体重が増えやすくなる「リバウンド」が起こりやすくなります。さらに、リバウンド後の体重は食事制限前より増加することが多く、これを繰り返すことで「痩せにくく太りやすい体質」へと変化しやすくなります。
医療分野やアンチエイジングの世界でも、60歳を過ぎるとダイエットは行うな。これが言われるようになりました。それは上記が理由です。ただ、私は、筋肉が減りにくい方法で適正体重までのダイエットを行うことは、シニア層にも有益であると考えます。
筋肉量減少が代謝と健康に与える影響
骨格筋はエネルギーを消費する組織です。1kgの筋肉は安静時でも1日あたり約13kcalのエネルギーを消費し、脂肪組織(1kgあたり約4kcal)と比較して約3倍以上のカロリーを燃焼します。
食事制限だけのダイエットでは、体重減少の約25-30%が筋肉の減少によるものだという研究結果もあります。例えば、5kgの減量に成功しても、そのうち約1.5kgは筋肉が失われている可能性があるのです。(適切な管理を行うと、このような結果にはなりません。一般的な話です。)
この筋肉減少は単に代謝低下だけでなく、以下のような健康面での悪影響も及ぼします
- ・インスリン感受性の低下(糖尿病リスクの上昇)
- ・姿勢維持能力の低下
- ・免疫機能の低下
- ・骨密度の減少
- ・活力・エネルギーの減少
特に30代以降は年齢とともに自然に筋肉量が減少していく傾向があるため、食事制限によってさらに筋肉が減ることは、長期的な健康維持の観点からも避けるべきです。
筋肉を守りながら脂肪を減らす食事戦略
健康的なダイエットの鍵は、「筋肉を維持しながら脂肪を減らすこと」です。そのために必要な食事戦略を紹介します。
1. 適切なタンパク質摂取
筋肉の主成分であるタンパク質は、ダイエット中こそ意識的に摂取する必要があります。一般的には体重1kgあたり1.6-2.2gのタンパク質が推奨されており、例えば体重60kgの方であれば、1日あたり96-132gのタンパク質摂取が目安となります。国際スポーツ栄養学会より(普段から運動を行っている方の必要量です)
鶏むね肉(100gあたり約23g)
卵(1個あたり約6g)
魚(マグロ赤身100gあたり約26g)
ギリシャヨーグルト(100gあたり約10g)
大豆製品(豆腐100gあたり約8g)
2. 適度なカロリー制限
極端な食事制限ではなく、1日200-500kcal程度の緩やかなカロリー制限が理想的です。基礎代謝よりも極端に少ないカロリー摂取は、体が飢餓状態と認識し、代謝を落として対応するためです。
私の運営しているジム(表参道BODY DIRECTOR)では月に体重の4%減量を目標と設定しているので、場合によっては上記よりも低カロリー食を行うことがあります。
3. 炭水化物の質と量の見直し
単純に炭水化物を制限するのではなく、質と摂取タイミングを見直します。精製された炭水化物(白米、白パン、菓子類)より、全粒穀物や野菜由来の複合炭水化物を選び、特に運動前後には適切に炭水化物を摂ることで、筋肉分解を防ぎながら脂肪燃焼を促進できます。脂肪燃焼だけを考えると、炭水化物を減らした状態での運動が効率的ですが、それは専門の指導者のもとで実施しないと危険を伴いますのでここではお勧めしません。
効率的な代謝アップに必要な栄養素と摂取タイミング
代謝を高く保ちながらダイエットを成功させるためには、特定の栄養素と摂取タイミングが重要です。
重要な栄養素
ビタミンB群
エネルギー代謝に必須の補酵素として機能し、食事からのエネルギー変換を助けます。全粒穀物、緑黄色野菜、肉類に多く含まれます。
マグネシウム
300以上の酵素反応に関与し、エネルギー産生を支援します。不足すると代謝が低下する可能性があります。ナッツ類、豆類、緑葉野菜に豊富です。
オメガ3脂肪酸
細胞膜の柔軟性を高め、細胞内の代謝プロセスを効率化します。また、炎症を抑制し、インスリン感受性を高めることで、脂肪燃焼を促進します。青魚、亜麻仁油、クルミなどに含まれています。
効果的な摂取タイミング
朝食の重要性
一晩の絶食後、朝食をとることで代謝が活性化します。特にタンパク質を含む朝食は、1日の代謝を高く保つ効果があります。
少量多食の原則
1日3回の大きな食事より、4-6回の少量の食事に分けることで、消化に伴う熱産生(食事誘発性熱産生)増加し、代謝が活性化します。
運動前後の栄養摂取
運動前には軽めの炭水化物とタンパク質を、運動後30分以内には質の高いタンパク質と適量の炭水化物を摂ることで、筋肉の回復と維持を促進します。
運動と食事の組み合わせによる相乗効果
食事戦略だけでも効果はありますが、適切な運動と組み合わせることで、その効果は飛躍的に高まります。
筋トレの重要性
レジスタンストレーニング(筋トレ)は筋肉量の維持・増加に直接的に作用します。週に2-3回、全身の主要な筋肉群を鍛えることで、食事制限中でも筋肉量を維持しやすくなります。
また、高強度の筋トレ後は「EPOC(運動後過剰酸素消費)」と呼ばれる現象により、運動後最大48時間までエネルギー消費が高まります。これは、運動後も体が「代謝が活発な状態」を維持することを意味します。有酸素運動との併用
有酸素運動は直接的な脂肪燃焼に効果的です。特に筋トレと組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます
- ・筋トレで筋肉量を維持・増加させ基礎代謝を向上
- ・有酸素運動で直接的に脂肪を燃焼
両方を行うことで、脂肪をより効率的に減少させます。 しかし、過度な有酸素運動は筋肉量の減少を伴うことがあるので、毎日30分ほどの有酸素運動が目安です。
無料相談のご案内
食事ダイエットを成功させるポイントについて解説しました。ダイエットにおいて最も重要なのは「筋肉を守りながら脂肪を減らす」という原則です。極端な食事制限は一時的に体重は減るものの、筋肉の減少や代謝の低下を招き、長期的には痩せにくい体質へと変化してしまう可能性があります。
上記の内容は一般的なアドバイスで、当社のパーソナルトレーニングでは個別性を考慮したメニューを作成します。
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