代表トレーナーブログ
良い「カラダ」道

最終回/リアル砂漠と東京砂漠〜島脇伴行がサハラで見たもの

最終回/島脇伴行がサハラで得たもの

この記事は自らもトレイルランナーである山田洋さんによるインタビューと記述になります。

生来の慎重派で、サハラ砂漠を走るなんて微塵も考えたことがなかった島脇トレーナー。普段はお客さんでもある森栄樹さんに話を持ちかけられ、1年かけて準備した結果、見事サハラ砂漠250kmのレースを完走します。

あれから半年。島脇トレーナーはサハラで何を持ち帰ってきたのか? 自身のこと、会社のこと、2つの視点で語って頂きました。

◆新しい困難に出会っても、たじろがない自分がいます

小さい頃から人間が持つ身体的な機能や生理学が好きだったという島脇トレーナー。自分という身体を使ったサハラ体験が今後の研究に役立つと話し始めました。

島脇「例えば、日常でストレスがない状態でいた場合、何かトラブルが起きると大きなストレスとして壁が出来始めます。でも、サハラのように何か起きるのが当たり前の状況下に身を置くと(特殊な環境下ですが)、人ってタフになるというか、ストレス耐性がつくということを身をもって体験できました。そこで思ったんです。日々の疲労やストレスを取り除くために、どんなアプローチをすれば良いか?って」


特殊な環境下にいたサハラは遠い思い出に昇華されたという

ストレス社会と言われて久しく、それは、心と体のメンテナンスを求められる社会と言い換えることができます。私たちはストレスとどう向き合ったら良いのでしょうか?

島脇「日常的に走っている人は心理的に強いというか、ストレスを感じるキャパが広いと思うんです。私もサハラ前後でストレス耐性が変わりましたから実感しています。サハラから帰ってきて意図的に運動量を減らしてみたんです。すると、ストレス耐性も減っていきました。フィジカルとメンタルは密接につながっているんです」

サハラに向けて準備段階から辛かったが、続けることができたという島脇トレーナー。心理的なストップは、自分で決めているんだと痛感したといいます。では、サハラをみなさんに勧めますか?と尋ねると落ち着いた口調でこう話しました。

島脇「サハラをみなさんに勧めるかというと、そういうことではなく、日常において、山に行ってみるとか、ゆっくりでもいいから走ってみるとか、仕事以外の場面で、身体的に少々の負荷を与えることが大切だと思うんです。小さな負荷を与え、それを克服することは、日常的に感じるストレスを乗り越えることと似ていると思うんです。その人にあった適度な負荷を与え続けることが、疲労対策やストレス対策になるんです」

島脇トレーナーをサハラに誘った森さんの言葉が印象に残っているという。サハラ体験が今後の自身の人生にどう影響していくのでしょうか。

島脇「私たちは日々に抑制をかけて生きています。でも、サハラの時のように、一つひとつのSTAGEをクリアしていくと、ゴールまでどんどん近づくわけで、体力的には落ちていくんだけど、心理的には楽になっていました。森さんの『人生の中で辛いことがたくさんあるけど、サハラはトップ5に入るよね!』という言葉のように、新しい困難に出会っても、たじろがない自分がいます。強くなったのかもですね(笑)」


干上がった川。

◆テント仲間と過ごした時間は凝縮した社会

島脇「7日間6ステージの250kmを通じて、今でも思い出すのは連日のテント仲間と過ごした時間です」

8人で1つのテントを共有するステージレースでは、1つのテントに寝袋を川の字のように並べ、見ず知らずの人たちと時間と空間を共有します。

島脇「一番印象に残っている言葉があって、何度もこのレースに参加している方の『これまで参加したレースの中で、1日もストレスを感じない仲間は初めてです』って言葉です。僕は初めてだからこんなもんなのかなぁという気持ちもあったんですけど、確かに、僕もストレスをほとんど感じなかった。どうしてだろうって考えたんです」

世界各国から1300人も参加する中、テント仲間が全て日本人だったという”幸運”もあったが、言い争いもいがみ合いもなく、むしろ、日を追うごとに結束力が高まっていったそうです。

島脇「レースが終わってから今も仲が良いんですけど、完全に一つのチームになっていましたね。走る行為自体は個人競技なんですが、不思議と走っている時も先にゴールしてもチームメイトのことが常に頭にありました。それとね、自然と個々の役割をそれぞれが担っていって、協力し合う体制が出来上がっていくんです」


1日もストレスを感じない仲間が集ったテントの様子

自然発生的に生まれた個々の役割とはどういうものがあったのだろうか?

島脇「会社組織でもプロジェクトチームでもいろんなタイプの人が混在しているように、テント仲間でもリーダー的な人、ムードメーカー、落ち着き払った人、といったそれぞれの個性がパズルのピースのようにはまっていくんです。それが、自然にです。会社の代表という立場で振り返ると、あの濃密な7日間での出来事は、仕事上のチームビルディングにたくさんのヒントが詰まっている凝縮した社会だったのかもですね」

誰一人として不快にさせる人がいなかった。それは全員が適度に気を使い、全体として過ごしやすいチームが自然と形成されていったといいます。島脇トレーナーはどんな役割だったのでしょうか?

島脇「僕ですか? 僕は空気のような存在ですかね。癒し系というか、チームメイトのマッサージをしたり、トレーナーとしての知見を授けたり。非日常だったのに、日常の役を自然と担っていて、それが嫌じゃなかったんですよ。ちなみに森さんは『エレガント役』です(笑)。いつも泰然としていて、慌てず、何事もエレガント。その姿がチームに落ち着きをもたらせていました。レースでのスピードは人それぞれです。たぶん、自らに課しているテーマも。でも、毎日ゴールするたびに尊敬の念が生まれてくるんです。これってすごく大事で、辛い思いを一緒にすると、信頼関係が生まれるんですよね」

◆一緒に体験し、共有する大切さ

島脇「私たちは、個を出す前にチームを理解することを重視しています。チームとして信頼関係を築くとそこに絆が生まれ、個々の自立につながると考えています。でも、頭でわかろうとしてもなかなか身を結ばないもので(笑)、仕事ではない何か難しいことをスタッフと一緒に体験するって大事だなと思いました」

仕事以外の時間に課題を課して、一生懸命になってほしいと島脇トレーナーはスタッフに期待します。その経験から得るものがあり、その経験がその人の人間力を高め、日常に良いフィードバックを与えられるとサハラを通じて強く感じたようです。

島脇「スタッフには一人が一つの事業部を持つようになってほしいと願っています。もちろん、そのためには私が影響力を感じてもらえる人間になることが大切で、スタッフでも、お客さんでも、その人のスイッチを入れられることができるメンターのような存在にならなければいけないですよね。自分も成長し、もっと深みのある人間になって、それを共有していきたいです」


森さん(左)と島脇トレーナー(右)

本来チャレンジャーな性格でもなく、石橋を叩きすぎるくらい慎重派の島脇トレーナーは『サハラのレースは、歩いても完走できる』と聞いてノリで参加を決めました。

待っていたのは、”森トレーナー”による綿密なトレーニング計画。1年掛けて砂漠仕様のウルトラランナーに仕上がった島脇トレーナーは、サハラ砂漠の過酷さに直面し、プチ栄養失調になりながらも無事に完走を果たしました。


一つの挑戦物語としてだけでなく、人生の中で5本の指に入る辛いこの体験が、トレーナーとして、会社の代表として、自身のこれからの人生に大きな副産物をもたらすことになりました。

振り返りの最後に島脇トレーナーはこう締めくくります。

島脇「これからの私の姿を見て、今後の島脇が楽しみ!と感じてくれる人がいればとても嬉しいです。え?もう一度サハラを走りたいかって? いや〜、別にいいかな(笑)。でも、サハラの体験が古臭くなっては意味がないので、自分としてもアップデートしていかなきゃいけないですね」